The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター発表)

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ポスター発表8 症例・施設

[P8-16] 介護老人保健施設Yにおける訪問診療開始後の1年間の取り組み

○福田 安理1,2、中島 正人2、森田 浩光2、牧野 路子2 (1. 社会医療法人天神会新古賀病院歯科、2. 福岡歯科大学総合歯科学講座訪問歯科センター)

【目的】
 要介護高齢者の口腔健康管理は,栄養摂取量など全身的な状態に影響を与えることが知られている。また,歯科医療従事者だけでなく, 医師・コメディカルなどの多職種も要介護高齢者の口腔管理の重要性を実感している。 そこで,我々は急性期病院の歯科部門から新たに訪問診療部門を立ち上げることになった。介護老人保健施設における口腔健康管理のニーズの把握を目的に,立ち上げから1年間の取り組みを調査したので報告する。
【方法】
 当院にて介護老人保健施設で2020年8月から2021年7月の1年間に訪問診療および入所時健診を行った要介護高齢者を対象とした。対象となった患者は29名であり,そのうち男性は13名,女性は16名であった。平均年齢は85.2±9.1歳であった。当院および当該施設の診療録より,年齢,性別,入所に至った原因,併存疾患,服用薬剤を調査した。
【結果と考察】
 介護老人保健施設への入所に至った原因疾患は,脳血管疾患が最多で15名(48.3%:男性8名,女性6名),次に骨折が8名(27.6%:男性1名,女性7名)と続き,骨折や脳血管疾患など他の要因なく認知症のみの入所者は4名(13.8%:男性1名,女性3名)であった。なお,他の要因と認知症を併存していたのは11名(37.9%:男性8名,女性3名)であった。入所時の併存疾患の数は,4.2±2.6(平均±S.D.)であり,最多で11,最少で1であった。入所時の服用薬剤数は6.5±12.4(平均±S.D.)であり,最多で22,最少で0であった。
入所に至った原因の約半数は脳血管疾患であったが,脳血管疾患は片麻痺や嚥下障害などの後遺症を起こすことが多い。介護老人保健施設はリハビリテーションの場でもあるため,口腔管理を行う際は脳血管疾患の後遺症を考慮しながら,摂食嚥下機能の回復も図る必要があることが考えられた。また,入所時の服用薬剤において,約35%が服用数7以上であるポリファーマシーであった。そのうちの多くが抗不安薬および睡眠薬を服用していたため,それらが日常生活や口腔に与える影響を理解して訪問診療を行うことが求められると考察する。したがって, 介護老人保健施設での訪問診療において,特に摂食嚥下障害,抗不安薬などへの対応が必要であることが示唆された。
(COI開示:なし)
(社会医療法人天神会新古賀病院倫理審査委員会承認番号2021-036)