The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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ポスター発表8 症例・施設

[P8-17] 筋萎縮性側索硬化症(A L S)患者に光学印象、3Dプリンターでのマウスピース複製作成が有効だった一症例

○坂口 豊1,2、稲毛 恵1、吉野 華苗1、鶴岡 秀一1、小島 佑貴1、井上 博之1 (1. 坂口歯科医院、2. 千葉市歯科医師会)

【目的】
 在宅口腔保健管理中のA L S患者にデジタルデータを利用し,口腔感覚過敏への対応が有効だった症例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
 69歳女性、筋萎縮性側索硬化症(胃瘻増設、人工呼吸器装着状態)、糖尿病、反復性膀胱炎、顔面接触皮膚炎、 足爪周囲炎、脂肪肝。咀嚼障害、摂食嚥下障害(経鼻経管栄養)
 主訴:在宅における口腔保健管理、粘膜保護マウスピース破損
X-3年反復性舌咬傷を主訴に大学病院にてマウスピースを作成。病状の進行とともに不快症状など家族とともに対応され複数作成ののち装着が安定。X -1年1月、紹介にて初診訪問歯科診療開始。X年1月不随運動と思われる咬反射様運動が強く発現することで開口維持困難、マウスピースの取り外し困難となる。マウスピースの変形破損が著しくなるも、旧マウスピースを継続使用していた。そこで、精密な複製作成を目的に、光学印象からForm2 3D プリンター(届出番号:17B2X100001001265 製造販売業者:株式会社 歯愛メディカル)にてBioMedクリアレジン(歯科咬合スプリント用材料 届出番号:17B2X100001001671 製造販売業者:株式会社 歯愛メディカル)を使用し、複製誤差の少ないマウスピース作成を行ったところ、装着感に不快感がなく顎位安定。急速に付随運動も軽減し、口内炎の訴えも激減し、経過良好。デジタルデータ化しているため、保存中も形態劣化はなく、再作成も容易である。なお本報告の発表について患者本人、家族から文書による同意を得ている。
【結果と考察】
 在宅療養口腔保健管理中のALS患者には口腔感覚過敏を主とした不快症状が多い。その対応、配慮は本人の快適度、家族の介護負担、医療提供者への負荷などに多大な影響があり、その改善は重要である。だが実際は、意思疎通が困難で家族、介護職員、また医療従事者の深い理解、協力がなくては維持できない。また一度獲得できた安定も、個人要素の他に、医療機器の規格変更、使用材料の劣化などの環境要素でも簡単に安定維持困難となることを経験している。今回採取したデジタルでのマウスピース複製は同寸法で繰り返し作成ができる事で製作の度の口腔内印象、咬合採得などの不快症状を伴わないとともに、装着時の微調整も必要なくその安定性は患者快適度、患者満足に大きく貢献できた。(C O I開示:なし 倫理審査対象外)