[P8-21] 舌癌術後嚥下障害患者の長期治療経過報告
【目的】
舌癌や口底癌などの治療法は手術療法が中心であり,術後の器質的な嚥下障害に対して摂食嚥下リハをはじめとする介入が患者のQOL維持のために必要となる。我々は左側舌側縁部扁平上皮癌切除後の患者に対し,舌接触補助床を含む摂食嚥下リハを行い,摂食嚥下機能安定後も長期的に口腔管理を行ってきた。本症例で患者の性格や心情を考慮しながら時々の病態に応じて適切に対応することの重要性を再確認したので報告する。
【症例の概要と処置】
62歳,男性。心筋梗塞,出血性胃潰瘍,両側下肢閉塞性動脈硬化症の既往あり。2008年7月咀嚼障害を主訴に当院を受診し,保存および補綴処置を行っていたが,2009年1月に左側舌側縁部扁平上皮癌(T4aN2bM0)と診断された。本学市川総合病院にて化学療法後,3月に腫瘍切除術(下顎正中分割による舌半側切除),右側肩甲舌骨筋上頸部郭清術,左側根治的頸部郭清術,大胸筋皮弁による再建術および気管切開を施行した。4月に口腔内感染症のため全身麻酔下にデブリードマン施行するも口腔オトガイ瘻が残存した。嚥下内視鏡検査では,喉頭蓋知覚麻痺,披裂や梨状窩への貯留,クリアランス低下が認められたが,喀出良好で唾液嚥下に問題はなく,呼吸訓練, 喀出訓練,唾液嚥下を行っていた。9月に胃瘻造設,12月に気切チューブを抜管して本学千葉病院に転院となり, 以後我々が治療を担当した。まず間接訓練と水分摂取から始め,2010年4月舌接触補助床装着,6月口腔オトガイ瘻の閉鎖後に本格的な直接訓練を開始した。2011年には摂取可能な固形食も徐々に増え,10月に胃瘻離脱した。 その後,舌運動機能の改善と歯周病に起因する抜歯による口腔内の変化に応じ,2013年と2018年にPAPおよび下顎義歯を新製し現在に至っている。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【結果と考察】
舌癌術後には体重52㎏,BMI 18.2にまで低下したが,術後2年半には胃瘻を離脱し,体重も63㎏,BMI 22.1 に回復した。摂食嚥下機能は回復したが,食生活や口腔衛生についての管理が行き届かず,残存歯を何本か歯周病で失うことになった。摂食嚥下機能がある程度回復し長期的に安定している場合でも,患者の性格や特性に応じて口腔機能管理をしていくことが重要であると考えた。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)
舌癌や口底癌などの治療法は手術療法が中心であり,術後の器質的な嚥下障害に対して摂食嚥下リハをはじめとする介入が患者のQOL維持のために必要となる。我々は左側舌側縁部扁平上皮癌切除後の患者に対し,舌接触補助床を含む摂食嚥下リハを行い,摂食嚥下機能安定後も長期的に口腔管理を行ってきた。本症例で患者の性格や心情を考慮しながら時々の病態に応じて適切に対応することの重要性を再確認したので報告する。
【症例の概要と処置】
62歳,男性。心筋梗塞,出血性胃潰瘍,両側下肢閉塞性動脈硬化症の既往あり。2008年7月咀嚼障害を主訴に当院を受診し,保存および補綴処置を行っていたが,2009年1月に左側舌側縁部扁平上皮癌(T4aN2bM0)と診断された。本学市川総合病院にて化学療法後,3月に腫瘍切除術(下顎正中分割による舌半側切除),右側肩甲舌骨筋上頸部郭清術,左側根治的頸部郭清術,大胸筋皮弁による再建術および気管切開を施行した。4月に口腔内感染症のため全身麻酔下にデブリードマン施行するも口腔オトガイ瘻が残存した。嚥下内視鏡検査では,喉頭蓋知覚麻痺,披裂や梨状窩への貯留,クリアランス低下が認められたが,喀出良好で唾液嚥下に問題はなく,呼吸訓練, 喀出訓練,唾液嚥下を行っていた。9月に胃瘻造設,12月に気切チューブを抜管して本学千葉病院に転院となり, 以後我々が治療を担当した。まず間接訓練と水分摂取から始め,2010年4月舌接触補助床装着,6月口腔オトガイ瘻の閉鎖後に本格的な直接訓練を開始した。2011年には摂取可能な固形食も徐々に増え,10月に胃瘻離脱した。 その後,舌運動機能の改善と歯周病に起因する抜歯による口腔内の変化に応じ,2013年と2018年にPAPおよび下顎義歯を新製し現在に至っている。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【結果と考察】
舌癌術後には体重52㎏,BMI 18.2にまで低下したが,術後2年半には胃瘻を離脱し,体重も63㎏,BMI 22.1 に回復した。摂食嚥下機能は回復したが,食生活や口腔衛生についての管理が行き届かず,残存歯を何本か歯周病で失うことになった。摂食嚥下機能がある程度回復し長期的に安定している場合でも,患者の性格や特性に応じて口腔機能管理をしていくことが重要であると考えた。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)