一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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ポスター発表9 その他

[P9-04] 深層学習による画像認識技術を用いた舌苔付着度の評価

○大川 純平1、堀 一浩1、泉野 裕美2、福田 昌代3、畑山 千賀子2、小野 高裕1 (1. 新潟大学医歯学総合研究科 包括歯科補綴学分野、2. 梅花女子大学 看護保健学部 口腔保健学科、3. 神戸常盤大学短期大学部 口腔保健学科)

【目的】
 口腔不潔の検査として用いられているTongue Coating Index(以下,TCI)は,舌を9分割して舌苔付着度を視覚的に評価したスコアを合計する必要がある。我々は、深層学習による画像認識技術を応用することで,TCIをより簡便かつ詳細に評価できると考え,画像認識ネットワークを構築し,その精度について検討を行った。
【方法】
 本研究では,1)舌の自動検出,2)舌苔付着度の評価の2つの画像認識ネットワークを構築した。デジタル口腔撮影装置(アイスペシャルC-II,松風)を用いて,高齢者215名 (74.0±6.9歳)の舌を突出させた写真を1回ずつ撮影し,学習データ157枚と検証データ58枚とに分けた。
1)舌の自動検出:学習対象は,学習データにおける舌を含む矩形の範囲とした。舌検出ネットワークにはYOLO v2を用い,学習済みモデル(ResNet-50)に対する転移学習を行なった。
2)舌苔付着度の評価:すべてのデータに対し,舌検出ネットワークにて表示された舌を含む矩形を7×7の計49エリアに分け,舌苔付着度とTCIの評価を行なった。評価者(歯科医師5名)は,各エリアに対し,TCIにおける舌苔スコアの基準から舌苔付着度を3段階のスコア(0,1,2)で評価した。全評価者のスコアの平均値から,各エリアの舌苔付着度を5段階のスコア(0: <0.4,1: <0.8,2: <1.2,3: <1.6,4: ≦2,右辺が平均値)に細分化し,その合計スコアからTCI(%)を算出した。学習対象は,学習データにおける各エリアとそのスコアとし,舌苔付着度ネットワークとして,事前学習済みモデル(ResNet-18)に対する転移学習を行なった。検証データを用い,評価者と舌苔付着度ネットワークとの一致度として,各エリアにおける舌苔付着度についてはκ係数を,TCIについては級内相関係数をそれぞれ算出した。
【結果と考察】
 舌検出ネットワークにより,すべての検証データで舌を含む矩形が表示された。各エリアにおける舌苔付着度およびTCIは,評価者と舌苔付着度ネットワークとの間で,それぞれ高い一致度を示した(κ係数=0.84,級内相関係数=0.80)。今回の結果より,画像認識技術を用いることで,舌苔をより詳細かつ部位別に自動評価できる可能性が示唆された。(COI開示:なし,新潟大学倫理審査委員会承認番号 2020-0044)