一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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課題口演1 地域包括ケアシステム

2022年6月11日(土) 08:50 〜 10:10 第4会場 (新潟県民会館 2F 小ホール)

[課題1-5] カムカム健康プログラムによるオーラルフレイル予防効果-長野県シニア大学松本・大北学部での検証-

増田 裕次1、○松尾 浩一郎2、仲座 海希3、金澤 学4、糸田 昌隆5、小川 康一6、鈴木 健嗣7、田中 友規8、飯島 勝矢8 (1. 松本歯科大学 総合歯科医学研究所、2. 東京医科歯科大学 大学院 地域・福祉口腔機能管理学分野、3. 松本歯科大学大学院 歯学独立研究科、4. 東京医科歯科大学大学院 口腔デジタルプロセス学分野、5. 大阪歯科大学医療保健学部 口腔保健学科、6. 株式会社フードケア トータルケア事業部、7. 筑波大学 システム情報系、8. 東京大学 高齢社会総合研究機構・未来ビジョン研究センター)

【目的】
カムカム健康プログラム(KKP)は,高齢者のオーラルフレイル予防を目的として,カムカム弁当を食べながら口の健康と栄養について学ぶ複合プログラムである。「口の健康・栄養・運動・社会参加」をコンセプトにした12週間の強化プログラムで,参加者の口腔機能低下症の割合が有意に低下したことを報告している。今回われわれは,KKPの自治体のオーラルフレイル予防プログラムへの展開を目指し,KKPによる食と咀嚼に関する意識変化を検証した。
【方法】
対象は,長野県シニア大学の松本学部と大北学部受講の1年生のうち,本研究に同意が得られ,研究前後の調査に参加した88名とした。参加者は,月に1回「噛む力を鍛え,栄養をしっかりと取る」をコンセプトとしたカムカム弁当を食べながら,口の健康と栄養・食事に関する講話を30分程度聴講するプログラムを5回受講した。介入前後に,食事と咀嚼に関する自記式質問票(カムカムチェック),オーラルフレイルチェックリスト(OFI-8),基本チェックリスト,咀嚼機能スコアを調査した。初回のOFI-8スコアによって,オーラルフレイル(OF)群と健常群の2群に分け,両群間での比較と,両群における介入前後での比較をノンパラメトリック検定にて行った。
【結果と考察】
介入前のOF群は,健常群と比べ,カムカムチェック合計スコア,咀嚼機能スコアおよび基本チェックリストのスコアが有意に低値であった。カムカムチェックでは,「噛みごたえのある食品を好むか」,「食事の時間を楽しく過ごせているか」の項目が,OF群の方が有意に低かった。KKPによる介入前後では,健常群では「噛むことを意識しているか」の項目のスコアが有意に改善していた。一方,OF群では「噛みごたえのある食事を食べているか」の項目でスコアが低下したものの,基本チェックリストとOFI-8のスコアが有意に改善していた。
 以上の結果より,オーラルフレイルに該当する高齢者では,咀嚼と食に関する自己評価が低く,フレイルの傾向にあることが示唆された。一方,KKPによる介入は,月に1回のプログラムではあったが,オーラルフレイル対策の一施策となることが示唆された。

本稿に関連し,開示すべき利益相反はない。本研究は,JST-SICORP (JPMJSC1813)の支援によるものである。(松本歯科大学 倫理審査委員会承認番号 第327号)