一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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課題口演2 口腔機能低下症

2022年6月11日(土) 10:30 〜 11:50 第4会場 (新潟県民会館 2F 小ホール)

[課題2-2] 舌超音波画像の輝度は、身体的フレイルと関係する

○田上 義弘、藤本 けい子、水頭 英樹、岸本 卓大、岩脇 有軌、後藤 崇晴、渡邉 恵、永尾 寛、市川 哲雄 (徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔顎顔面補綴学分野)

【目的】
 舌の超音波画像における輝度に着目し,舌超音波画像の輝度と口腔機能や身体的フレイルとの関係性を検討した。
【方法】
 徳島大学病院歯科(そしゃく科)にてメインテナンスを行っている65歳以上の高齢者101名を対象とした。舌の評価は,超音波画像の輝度と舌圧を測定した。舌超音波画像は,汎用超音波画像診断装置(Vscan with Dual Probe, GE Healthcare, 東京)を用い,唾液を嚥下させ,下顎安静位を取らせた後に記録した。超音波画像解析には,画像解析ソフト(ImageJ, NIH, Maryland)を用いた。顎下側皮膚直下の顎舌骨筋下端から舌背表面までの距離を測定し,その計測軸を挟んだ幅40ピクセル(11.1 mm)の区域における平均輝度の算出を行った。舌圧は,JMS舌圧測定器(株式会社ジェイ・エム・エス, 広島)を用いて測定した。フレイルの評価は,握力測定と基本チェックリストの運動機能に関する5項目の該当数を用いて評価した。
 年齢,舌圧,平均輝度,基本チェックリスト,握力の男女における違いに関しては,Mann–Whitney U testを用いて検討した。また,舌圧・平均輝度と基本チェックリスト・握力との相互関係に関しては,Spearman の相関分析を行った。統計分析は,SPSS® version 25.0(IBM, Chicago)を用い,有意確率は5%とした。
【結果と考察】
 生体における超音波画像の輝度は,線維化・脂肪化によって高くなることが示されている。舌の平均輝度は, 女性が男性と比較して有意に高い値を示した。基本チェックリストの運動機能に関する項目では,女性の方が男性と比較して該当数が多い傾向を示した。握力は,男性が女性と比較して有意に高い値を示した。
 握力と舌の平均輝度は有意な負の相関(Spearman の相関係数 -0.314)を示し,基本チェックリストにおいて運動機能に関する項目の該当数と舌の平均輝度は有意な正の相関(Spearman の相関係数 0.266)を示した。
 舌の平均輝度は舌圧よりも身体的フレイルの状況と関係していたことから,比較的健康な高齢者において,舌の超音波画像における輝度測定は,身体的フレイルに関連する早期の口腔機能低下を推定できる可能性が示唆された。
(COI 開示:なし)(徳島大学病院医学系研究倫理審査委員会承認番号:3880)