[課題2-3] 当院外来通院患者に対する口腔機能低下症の評価および管理指導の検討
【目的】
口腔機能低下症(以下,低下症)の検査および診断の臨床は拡大しており,我々はこれまでに当院歯科外来初診患者の低下症診断の実態を報告した(Onuki et al, 2021).本発表では低下症診断後の管理指導や再評価結果を検討した.
【方法】
当院歯科外来に初診の65歳以上で,低下症検査に同意が得られた者を対象として初回評価を実施した.低下症に該当した者に対してはリーフレットを用いた管理指導を行い,初回評価から6か月以降に当院歯科に通院継続している患者に対して再評価を実施,初回評価と再評価結果の比較を行った.更に,再評価非該当であった者を改善群,再度低下症に該当した者を再該当群として,各群における初回評価と再評価の結果を比較した.統計解析はマクネマー検定,ウィルコクソンの符号順位検定およびマンホイットニーU検定を行い,有意水準を0.05とした.
【結果と考察】
2019年6月から2021年6月末までに初回評価を受けた262名のうち低下症該当者は86名(32.8%),このうち,初回評価の低下症該当から6か月以降に再評価を受けた患者は39名であった.初回評価と再評価を比較すると,項目ごとの該当人数の割合での比較では口腔乾燥,咬合力低下,嚥下機能低下に有意な改善が認められ,計測値の比較では口腔衛生状態,咬合力,咀嚼機能,嚥下機能に改善が認められた.再評価を受けた39名を,改善群20名(51.3%),再該当群19名(48.7%)の2群に分け初回評価と再評価を比較したところ,項目ごとの該当人数の割合の比較では,改善群では口腔乾燥,咬合力低下,嚥下機能低下が有意に改善していたが,再該当群では7項目のいずれも改善が認められなかった.初回評価と再評価の計測値の比較では,改善群において咬合力のみが有意に改善した結果となった.更に,初回評価と再評価の得られた数値の差を改善値として算出し,改善群と再該当群で比較したところ,咬合力のみ有意な差を認めた.いずれの比較においても舌口唇運動機能低下,低舌圧は改善が認められなかった.今回の結果から,適切な歯科治療による咬合力の維持・向上は低下症の改善に寄与していたと考えられた.舌口唇運動や舌圧の改善に向けた管理指導方法の検討が必要であると考えられた.
(COI 開示:なし)
(新潟大学 倫理審査委員会承認番号 2019-0085)
口腔機能低下症(以下,低下症)の検査および診断の臨床は拡大しており,我々はこれまでに当院歯科外来初診患者の低下症診断の実態を報告した(Onuki et al, 2021).本発表では低下症診断後の管理指導や再評価結果を検討した.
【方法】
当院歯科外来に初診の65歳以上で,低下症検査に同意が得られた者を対象として初回評価を実施した.低下症に該当した者に対してはリーフレットを用いた管理指導を行い,初回評価から6か月以降に当院歯科に通院継続している患者に対して再評価を実施,初回評価と再評価結果の比較を行った.更に,再評価非該当であった者を改善群,再度低下症に該当した者を再該当群として,各群における初回評価と再評価の結果を比較した.統計解析はマクネマー検定,ウィルコクソンの符号順位検定およびマンホイットニーU検定を行い,有意水準を0.05とした.
【結果と考察】
2019年6月から2021年6月末までに初回評価を受けた262名のうち低下症該当者は86名(32.8%),このうち,初回評価の低下症該当から6か月以降に再評価を受けた患者は39名であった.初回評価と再評価を比較すると,項目ごとの該当人数の割合での比較では口腔乾燥,咬合力低下,嚥下機能低下に有意な改善が認められ,計測値の比較では口腔衛生状態,咬合力,咀嚼機能,嚥下機能に改善が認められた.再評価を受けた39名を,改善群20名(51.3%),再該当群19名(48.7%)の2群に分け初回評価と再評価を比較したところ,項目ごとの該当人数の割合の比較では,改善群では口腔乾燥,咬合力低下,嚥下機能低下が有意に改善していたが,再該当群では7項目のいずれも改善が認められなかった.初回評価と再評価の計測値の比較では,改善群において咬合力のみが有意に改善した結果となった.更に,初回評価と再評価の得られた数値の差を改善値として算出し,改善群と再該当群で比較したところ,咬合力のみ有意な差を認めた.いずれの比較においても舌口唇運動機能低下,低舌圧は改善が認められなかった.今回の結果から,適切な歯科治療による咬合力の維持・向上は低下症の改善に寄与していたと考えられた.舌口唇運動や舌圧の改善に向けた管理指導方法の検討が必要であると考えられた.
(COI 開示:なし)
(新潟大学 倫理審査委員会承認番号 2019-0085)