一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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課題口演2 口腔機能低下症

2022年6月11日(土) 10:30 〜 11:50 第4会場 (新潟県民会館 2F 小ホール)

[課題2-5] 口腔機能低下症診断項目と摂食嚥下障害、フレイル、サルコペニアとの関連

○高橋 賢晃1、菊谷 武1,2、戸原 雄1、保母 妃美子1、礒田 友子1、古屋 裕康1、仲澤 裕次郎1、田中 公美1、宮下 大志1、加藤 陽子2、田村 文誉1 (1. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック、2. 日本歯科大学大学院 生命歯学研究科 臨床口腔機能学)

【目的】
 口腔機能低下症は口腔機能が複合的に低下している疾患であり,進行すると摂食嚥下障害やサルコペニアなど他の病態を合併する場合も考えられ適切な対応が求められる。本研究の目的は,口腔機能低下症の診断に用いる検査とフレイル,摂食嚥下障害,サルコペニアとの関連を検討し,口腔機能評価と各病態の関連を検討することである。
【対象および方法】
 2019年から2年間で口腔リハビリテーションを専門とするクリニックに嚥下障害を主訴として来院した患者150名(男性88名,女性62名,平均年齢78.1±9.8歳)を対象とした。対象者に対して原疾患,ADL,基本チェックリスト,摂食嚥下障害の重症度(FOIS),骨格筋量,握力,口腔機能低下症の診断基準7項目の評価を行った。また,FOIS6以下を嚥下障害と,基本チェックリストよりフレイルの存在を明らかにし,アジアワーキンググループ(AWGS2019)によってサルコペニアの存在を診断した。さらに,フレイル,嚥下障害,サルコペニアの有無と口腔機能低下症の各評価項目との関連を検討した。なお,ROC曲線を用いてフレイル,嚥下障害, サルコペニアのカットオフ値を算出した。日本歯科大学生命歯学部倫理委員会(承認番号:NDU-T2018-35)
【結果および考察】
 疾患は脳血管疾患が48名(32%)で最も多く,以下,神経筋疾患,消化器疾患,精神疾患,認知症であった。 150名中111名が口腔機能低下症と診断された。各項目における低下の割合は,口腔不潔32%,口腔乾燥61%,咬合力57%,舌口唇運動機能92%,舌圧78%,咀嚼機能27%,嚥下機能69%であった。舌圧,舌口唇運動機能の低下の割合が多く認められた。フレイル,嚥下障害,サルコペニアに該当した患者は,それぞれ,76名,95名, 35名認められた。舌口唇運動機能におけるカットオフ値をフレイル,嚥下障害,サルコペニアの順に示すと6.3回,5.7回,5.1回であった。咬合力におけるカットオフ値は,587N,510N,533Nであった。舌圧におけるカットオフ値は,23.1kPa,20kPa,25.3kPaであった。本調査によって,フレイル,嚥下障害,サルコペニアと関連を示す口腔機能のカットオフ値が明らかになった。これらの値を下回る対象者に対しては,各病態に合わせた対応が必要であると考えられた。COI開示:なし