The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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シンポジウム2
学術用語シンポジウム:日本人の食事摂取基準を咀嚼する ~栄養の概念から2020年版のポイントまで~

Sat. Jun 11, 2022 10:50 AM - 11:50 AM 第1会場 (りゅーとぴあ 2F コンサートホール)

座長:大久保 真衣(東京歯科大学口腔健康科学講座摂食嚥下リハビリテーション研究室 准教授)

企画:学術用語委員会
*認定制度指定研修

[SY2-2] 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に基づく高齢者歯科保健対策

○三浦 宏子 (北海道医療大学歯学部 保健衛生学分野)

【略歴】
1985年 北海道医療大学歯学部口腔衛生学講座 助手
1995年 北海道医療大学歯学部口腔衛生学講座 講師
1997年 東京大学大学院医学系研究科国際保健学専攻 講師
2000年 九州保健福祉大学保健科学部 教授  
2008年 国立保健医療科学院 口腔保健部長  
2014年 国立保健医療科学院 国際協力研究部長 
2020年 北海道医療大学歯学部保健衛生学分野 教授

(社会的活動)
厚生労働省 歯科口腔保健の推進に関する専門委員会 委員
厚生労働省 歯科医療提供体制等に関する検討会 委員  など
【抄録】
 食事摂取基準(2020版)では、高齢化の進展や生活習慣病の有病者数の増加を踏まえて、「高齢者の低栄養・フレイル予防」と「生活習慣病の発症予防・重症化予防」の2つを策定の主目的としている。良好な食生活の維持には、咀嚼等の口腔機能の維持・向上が基盤的条件のひとつとして大きく関与する。高齢期の咀嚼を含む摂食嚥下機能の低下が、低栄養のリスク要因となることが多くの疫学研究で指摘されている。国民健康・栄養調査においても、咀嚼と低栄養との関連性について報告がなされるなど、全国データでの把握が進みつつある。また、成人期以降での咀嚼の状況と肥満との関連性についても、いくつかの横断研究において関連性が報告されている。
 食事摂取基準(2020年版)に基づく高齢者への食事指導を円滑に進めるうえでも、咀嚼等の口腔機能の現状把握は大きな意味を有する。これまでの研究では、歯科治療によって臼歯部咬合を改善したうえで食事指導を行うことによって、栄養改善効果は大きく高まることが報告されている。高齢者における健康状態の維持・向上には咀嚼機能の良否は密接に関与するため、健康日本21(第二次)と歯科口腔保健の推進に関する基本的事項において、高齢者の咀嚼の改善は目標項目となっている。これらの両事業による地域歯科保健対策が平成25年度から進められており、令和4年度には最終評価が公表される。さらに、平成30年度からの特定健康診査(第3期)の標準的質問票において咀嚼に関する項目が収載されたことに伴い、令和3年度以降は大規模データを用いて咀嚼の現状を把握できるようになった。
 そこで、本講演では高齢者における咀嚼機能に関する疫学データや国の統計データ等の近年の動向を提示するとともに、食事摂取基準(2020年)に基づく高齢者への食事指導について、どのように歯科からアプローチしていくかについて検討していきたい。また、健康日本21(第二次)と歯科口腔保健の推進に関する基本的事項の最終評価における高齢者歯科に関連する項目の結果についても言及し、高齢期の健康づくりの基盤となる歯・口腔の健康の現状についても報告したいと考えている。