The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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シンポジウム4
学術シンポジウム2:生涯における口腔機能の維持を考える ~青年期から壮年期には何が起こっているのか?~

Sat. Jun 11, 2022 4:20 PM - 5:40 PM 第1会場 (りゅーとぴあ 2F コンサートホール)

座長:池邉 一典(大阪大学大学院歯学研究科有床義歯補綴学・高齢者歯科学分野 教授)、田村 文誉(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック 教授)

企画:学術委員会

[SY4-1] 口腔機能発達不全症の診断に該当する成人の問題とは

○田村 文誉 (日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)

【最終学歴】
平成元年 昭和大学歯学部卒業
平成9年 歯学博士

【職歴】
平成元年 昭和大学歯学部 第三補綴学教室入局
平成3年 同 口腔衛生学教室入局
平成13年4月~平成14年3月 米国アラバマ大学歯学部 補綴学・生体材料学教室留学 を経て、
平成16年 日本歯科大学 講師
平成19年 同 准教授
平成24年 同 口腔リハビリテーション科 科長
     日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック勤務
平成25年 同 教授  現在に至る


【所属学会(役職・認定医)等】
日本障害者歯科学会理事
日本障害者歯科学会 理事,専門医・指導医・認定医
日本老年歯科医学会 指導医・認定医・専門医・摂食機能療法専門歯科医師
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 認定士
 
主な著書:『子どもの食べる機能の障害とハビリテーション(編著)』『ダウン症の子どもの摂食嚥下ハビリテーション(編著)』『子どもとその口腔の診かた(編著)』『子どものお口どう育つの?(編著)』『子どもの歯科訪問診療実践ガイド』『歯科医師のための構音障害ガイドブック』『小児歯科学第5版(共著)』『上手に食べるために1(共著),2(単著),3(共著)』『Groher & Craryの嚥下障害の臨床マネジメント(共訳)』『口から診える症候群・病気(共著)』『重症児のトータルケア改訂第2版(共著)』ほか
【抄録】
 平成30年度、口腔機能管理の充実を目的に、口腔機能発達不全症と口腔機能低下症が同時に歯科医療保険に新規収載され、乳幼児期からの口腔機能の成育、高齢期での口腔機能低下予防への取り組みが進んでいます。そして令和4年度の診療報酬改定では、口腔機能発達不全症は0歳から18歳未満まで、そして口腔機能低下症は50歳以上と、対象年齢の拡大が行われました。これは、成人期における口腔機能管理の重要性が,広く世の中に認知されてきたことの表れと考えられます。しかしながら、この対象年齢に該当しない成人期においても口腔機能の問題を有する者が一定数存在すると推測されます。小児期の口腔機能発達不全症は改善するケースばかりではなく、成人期から高齢期にかけても影響を及ぼす可能性もあります。また、成人期になってから、口腔機能の低下が早期に始まる場合もあると考えられます。よって口腔機能低下症予防は、低下をきたした高齢期からの対応では遅きに失する場合もあり、それより以前からの健康維持増進が不可欠です。
 そこで成人期の口腔機能の問題について実態を把握するため、東京都・山梨県・長野県・岐阜県にある6つの地域歯科医院に協力を求め、2021年11月から12月までの期間に歯科医院に来院した15歳以上の成人を対象に、口腔機能発達不全症(離乳完了後)のチェックリストを用いて調査を行いました。その結果、48名(男性14名、女性34名)のデータが集まり、年齢は15歳から45歳でした。21名(43.8%)にアレルギー疾患があり、7名(14.6%)は基礎疾患を有していました。BMIの値から、やせは3名(6.3%)、肥満は9名(18.8%)でした。チェックリスト全項目の中で最も多く該当したのは、Aその他の機能Bその他C-14「口呼吸がある」の17名(35.4%)であり、また「鼻炎がある」と回答した者は13名(27.1%)と高率でした。口腔機能発達不全症の診断に必須であるA食べる機能B咀嚼機能の項目では、C-2「機能的因子による歯列・咬合の異常がある」が最も多く、11名(22.9%)でした。口腔機能発達不全症の診断基準として、A食べる機能B咀嚼機能の項目を1項目以上含み、全体で2項目以上に該当することが必須ですが、その基準で診断されたのは10名(20.8%)でした。
 本調査は歯科医院の数、対象者数も限られているため成人期の口腔機能の問題の全体像を表しているとは言えません。しかしながら、青年期から壮年期にかけて一定の割合で口腔機能発達不全症の症状が存在すること、またその中で口呼吸の問題が最も多いことがうかがわれました。口呼吸は、口腔乾燥、う蝕や歯周炎の発症、歯列や咬合の問題のみならず、口輪筋の低緊張、アレルギー疾患、扁桃肥大など、全身的な問題にも関連します。これらの問題が高齢期に及ぶかについては今後の研究、調査を待つ必要がありますが、少なくとも成人期においても口腔機能管理・指導が必要であることは明らかです。小児期から高齢期にかけてのシームレスな口腔機能管理の充実が望まれます。