[SY4-2] 小児期の気道通気状態から顎咬合の発育を考える
【略歴】
1983年 九州大学歯学部 卒業
1987年 九州大学歯学部附属病院 小児歯科 助手
1996年 カナダ・ブリティッシュコロンビア大学(文部科学省在外研究員)
1997年 九州大学歯学部附属病院 講師
2003年 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 小児歯科学分野 教授
2008年 日本小児歯科学会 副理事長
2012年 日本小児歯科学会 理事長(~2016年)
2013年 日本歯科医学会 常任理事 (重点研究委員会 担当理事)(~2016年)
2014年 鹿児島大学 評議員(~2020年)
鹿児島大学医学部・歯学部附属病院 副病院長(歯科担当)(~2020年)
鹿児島大学歯学部 副学部長(~2020年)
2021年 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 副研究科長
【学会関係役職】
日本小児歯科学会 常務理事 (元理事長)
成育歯科医療研究会 会長
日本顎口腔機能学会 理事 (元会長)
鹿児島県小児保健学会 副会長
1983年 九州大学歯学部 卒業
1987年 九州大学歯学部附属病院 小児歯科 助手
1996年 カナダ・ブリティッシュコロンビア大学(文部科学省在外研究員)
1997年 九州大学歯学部附属病院 講師
2003年 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 小児歯科学分野 教授
2008年 日本小児歯科学会 副理事長
2012年 日本小児歯科学会 理事長(~2016年)
2013年 日本歯科医学会 常任理事 (重点研究委員会 担当理事)(~2016年)
2014年 鹿児島大学 評議員(~2020年)
鹿児島大学医学部・歯学部附属病院 副病院長(歯科担当)(~2020年)
鹿児島大学歯学部 副学部長(~2020年)
2021年 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 副研究科長
【学会関係役職】
日本小児歯科学会 常務理事 (元理事長)
成育歯科医療研究会 会長
日本顎口腔機能学会 理事 (元会長)
鹿児島県小児保健学会 副会長
【抄録】
小児期に気道通気障害が継続すると、口唇閉鎖不全や中・下顔面部の顔面高の延長、あるいは下顎角部の開大に加え、上顎前突や下顎後退咬合、さらには反対咬合など、顎顔面や歯列咬合の成長発育に様々な形態的不調和が生じる。また、通気障害は、鼻腔から下咽頭までのあらゆる部位で複数箇所に生じる場合もある。しかしながら、複雑な管腔構造を有する上気道では、その障害部位を正確に特定することが難しいため、扁桃摘出術などの治療の予知性は高いとは言えない。
このような問題を抱えた上気道通気障害の病態把握については、気道の断面積や前後径の計測よる形態分析が主流であり、これまで呼吸の機能的側面からの的確な評価はできなかった。そこで我々は、頭頸部CTデータを活用した呼吸機能の解析方法を考案し、通気状態の評価を試みている。本法は上気道部分の三次元管腔モデルを構築し、このモデルの呼気と吸気の空気の流れについて、工学的手法である流体シミュレーション解析を用いて、立体的な通気機能の評価を可能にしている。
上気道通気障害の発生部位は、鼻腔部分と上部・中部・下部の咽頭部分に分けられ、これらの部位の複数箇所にまたがって障害が発生する可能性もある。通気障害部位の病態は、鼻腔であれば鼻炎や鼻中隔湾曲、上咽頭部であれば咽頭扁桃肥大、中咽頭部であれば口蓋扁桃肥大や延長した軟口蓋などが挙げられ、それぞれの耳鼻科的な対処法は、消炎や外科的処置、アデノイド切除、口蓋扁桃摘出などとなる。一方、歯科治療に関連の深い病態と対処法としては、鼻腔狭窄には上顎側方急速拡大法、低位舌には口腔筋機能療法、下顎後退咬合や小下顎症には下顎前方誘導法などの有効性が推察される。
成長期の呼吸障害では、顎咬合の発育異常の範疇を超えてさらに大きな問題が生じる場合もある。小児期における睡眠中のいびき、夜間の体動と頻繁な覚醒、日中の集中力の欠如などは、睡眠中に低呼吸状態に陥る閉塞性睡眠時無呼吸症候群がその背景にあると考えられている。
本シンポジウムでは、小児期の気道通気状態が、顎咬合の発育とどのような関連性があり、上顎側方急速拡大などの歯科的対応がどのような影響を及ぼすかについて、我々の解析結果を供覧し、成長期の呼吸障害が、その後の口腔の形態と機能の発育に及ぼす影響について、国内外における医科・歯科領域との共同研究の成果も交えて述べたい。
歯科医師は、小児の口腔の一般診察時に、口蓋扁桃の肥大や軟口蓋の延長、鼻腔粘膜の肥厚などを直接観察でき、また、医療面接を通して睡眠呼吸障害の可能性を察知できる立場にある。
このため、関連医療分野との連携構築を含め、本領域における診断力の向上と対応法の推進を図ることは、口腔を通した生涯のQOLの向上と維持において、重要な医療提供の機会となり得る。
本講演がご出席の皆様の日々の臨床に、多少なりともお役に立てれば幸いである。
小児期に気道通気障害が継続すると、口唇閉鎖不全や中・下顔面部の顔面高の延長、あるいは下顎角部の開大に加え、上顎前突や下顎後退咬合、さらには反対咬合など、顎顔面や歯列咬合の成長発育に様々な形態的不調和が生じる。また、通気障害は、鼻腔から下咽頭までのあらゆる部位で複数箇所に生じる場合もある。しかしながら、複雑な管腔構造を有する上気道では、その障害部位を正確に特定することが難しいため、扁桃摘出術などの治療の予知性は高いとは言えない。
このような問題を抱えた上気道通気障害の病態把握については、気道の断面積や前後径の計測よる形態分析が主流であり、これまで呼吸の機能的側面からの的確な評価はできなかった。そこで我々は、頭頸部CTデータを活用した呼吸機能の解析方法を考案し、通気状態の評価を試みている。本法は上気道部分の三次元管腔モデルを構築し、このモデルの呼気と吸気の空気の流れについて、工学的手法である流体シミュレーション解析を用いて、立体的な通気機能の評価を可能にしている。
上気道通気障害の発生部位は、鼻腔部分と上部・中部・下部の咽頭部分に分けられ、これらの部位の複数箇所にまたがって障害が発生する可能性もある。通気障害部位の病態は、鼻腔であれば鼻炎や鼻中隔湾曲、上咽頭部であれば咽頭扁桃肥大、中咽頭部であれば口蓋扁桃肥大や延長した軟口蓋などが挙げられ、それぞれの耳鼻科的な対処法は、消炎や外科的処置、アデノイド切除、口蓋扁桃摘出などとなる。一方、歯科治療に関連の深い病態と対処法としては、鼻腔狭窄には上顎側方急速拡大法、低位舌には口腔筋機能療法、下顎後退咬合や小下顎症には下顎前方誘導法などの有効性が推察される。
成長期の呼吸障害では、顎咬合の発育異常の範疇を超えてさらに大きな問題が生じる場合もある。小児期における睡眠中のいびき、夜間の体動と頻繁な覚醒、日中の集中力の欠如などは、睡眠中に低呼吸状態に陥る閉塞性睡眠時無呼吸症候群がその背景にあると考えられている。
本シンポジウムでは、小児期の気道通気状態が、顎咬合の発育とどのような関連性があり、上顎側方急速拡大などの歯科的対応がどのような影響を及ぼすかについて、我々の解析結果を供覧し、成長期の呼吸障害が、その後の口腔の形態と機能の発育に及ぼす影響について、国内外における医科・歯科領域との共同研究の成果も交えて述べたい。
歯科医師は、小児の口腔の一般診察時に、口蓋扁桃の肥大や軟口蓋の延長、鼻腔粘膜の肥厚などを直接観察でき、また、医療面接を通して睡眠呼吸障害の可能性を察知できる立場にある。
このため、関連医療分野との連携構築を含め、本領域における診断力の向上と対応法の推進を図ることは、口腔を通した生涯のQOLの向上と維持において、重要な医療提供の機会となり得る。
本講演がご出席の皆様の日々の臨床に、多少なりともお役に立てれば幸いである。