一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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シンポジウム7
医工連携シンポジウム:高齢者歯科医療のためのICT

2022年6月11日(土) 14:50 〜 16:10 第2会場 (りゅーとぴあ 5F 能楽堂)

座長:佐々木 誠(岩手大学理工学部バイオ・ロボティクス分野 准教授)、堀 一浩(新潟大学大学院医歯学総合研究科包括歯科補綴学分野 准教授)

*専門医申請者研修

[SY7-1] XR技術を用いた介助歯磨きスキル訓練システム

○佐々木 誠 (岩手大学理工学部システム創成工学科バイオ・ロボティクス分野)

【略歴】
2005年3月 秋田大学大学院工学資源学研究科生産・建設工学専攻修了,博士(工学)
2005年4月 佐賀大学大学院工学系研究科生体機能システム制御工学専攻助手
2007年4月 佐賀大学大学院工学系研究科生体機能システム制御工学専攻助教
2008年9月 理化学研究所脳科学総合研究センター研究員
2009年10月 岩手大学工学部機械システム工学科バイオ・ロボティクス分野助教
2010年4月 理化学研究所客員研究員(現在に至る)
2017年9月 岩手大学理工学部システム創成工学科バイオ・ロボティクス分野准教授(現在に至る)

【主な専門分野】
生体医工学,ロボット工学,リハビリテーション工学

【主な研究テーマ】
前頸部多チャンネル表面筋電図を用いた嚥下機能解析,ハプティックデバイスを用いた舌の感覚機能評価,XR技術を用いた遠隔指導システムの開発など
【抄録】
 高齢障害者や要介護者の口腔の健康維持において,その要となる歯磨きの実施は,介護者に委ねられる.しかし,口腔内感覚フィードバックがなく,自身の日常的な歯磨きとは異なるスキルを要求される介助歯磨きでは,プラークを適切に除去できないばかりか,被介護者に痛みや不快感を与え,口を開けない,歯ブラシを噛む,舌で押し出す等の拒否反応を引き起こす場合がある.この拒否反応は,う蝕や歯周病に加え,誤嚥性肺炎等の全身疾患の発症リスクを高める要因となるため,介助歯磨きスキルを習得・向上するための教育プログラムの充実が不可欠である.
 一方,新型コロナウイルス感染症のパンデミックは,ソーシャルディスタンスの確保の観点から,教育現場における対面型学習の実施を困難にした.多くの教育機関が「実技訓練の質と量をどのように担保すべきか?」と工夫を凝らす中,VR(仮想現実),AR(拡張現実),MR(複合現実)等のXR技術は,その一つの解として注目を集めている.
 このような背景のもと,我々は,JST A-STEPトライアウトタイプ(with/postコロナにおける社会変革への寄与が期待される研究開発課題)の支援を受け,東北大学歯学部と共同で,遠隔指導対応型の介助歯磨きスキル訓練シミュレータの開発に取り組んできた.本シミュレータの主な特徴は,(1) スキルの見える化,定量化が可能,(2) 指導者と訓練者が互いのブラッシング動作や力の入れ具合を任意視点で確認可能,(3) 最適化計算によって自動生成した手技をお手本動作として自主訓練可能,(4) 4G回線程度の通信速度で遠隔訓練が可能などである.
 本講演では,「介助歯磨き」を一つの例として,XR技術を用いた遠隔訓練システムの可能性について紹介するが,他の手技の訓練・評価に応用することも容易である.本講演内容が,聴講者の抱える諸問題を解決し,with/postコロナにおける新しい教育システムを構築するためのヒントになれば幸いである.