[SY7-2] モバイル機器を用いた咀嚼能率および舌苔付着度の画像解析
【略歴】
2014年3月 新潟大学歯学部 卒業
2019年3月 新潟大学大学院医歯学総合研究科 修了
2019年5月 新潟大学医歯学総合病院 摂食機能・補綴系歯科 助教
2021年5月 新潟大学医歯学総合研究科 包括歯科補綴学分野 助教
2014年3月 新潟大学歯学部 卒業
2019年3月 新潟大学大学院医歯学総合研究科 修了
2019年5月 新潟大学医歯学総合病院 摂食機能・補綴系歯科 助教
2021年5月 新潟大学医歯学総合研究科 包括歯科補綴学分野 助教
【抄録】
超高齢社会に加え、昨今のCOVID-19感染拡大をうけ、多くの高齢者に対面での口腔管理を行うことが困難な状況になっている。特に口腔管理が必要となりうる在宅あるいは施設入居の患者においては、歯科医師や歯科衛生士以外においても口腔管理ができることが望ましい。さらに、個人での口腔管理も可能となれば、口腔リテラシーの向上にも寄与できるのではないだろうか。
近年、人工知能による画像解析技術は、医療分野にも応用され始めている。特に、スマートフォンにおける処理速度やカメラ性能の向上、ネットワーク通信の高速化により、撮影された画像から様々な情報を取得し、共有することが可能となった。「だれでも・どこでも・簡単に」実施可能なスマートフォンによる撮影は、視覚的評価も多い歯科医療分野においては、親和性が高いと考えられる。また、評価結果を視覚的に記録してその場で伝えることができれば、効果的なフィードバックが行えるのではないだろうか。
演者らは、口腔機能低下症の診査に関連し、咀嚼能力測定と舌苔付着評価のアプリケーションについて開発を行っており,すでに実用可能・手前段階にある。本シンポジウムでは、それらを踏まえ、評価診断支援や口腔リテラシー向上に寄与できるような仕組みを検討したい。
1)咀嚼能力測定
咀嚼機能評価用グミゼリー(UHA味覚糖,大阪)を用い、30回咀嚼後に吐き出されたグミゼリーの咬断片をスマートフォンにより撮影し、表面積増加量を咀嚼能率として評価する手法である。
撮影した画像からは、グミゼリー咬断片の面積や周長、色調などの情報を数値化できる。これらの数値情報を独立変数として用い、咀嚼能力自動解析装置(東京光電,東京)により測定された表面積増加量を目的変数とした回帰式を作成することで、咀嚼能率の予測が可能となる。
2)舌苔付着度の評価
突出させた舌をスマートフォンにより撮影し、Tongue Coating Index(以下、TCI)を評価する手法である。撮影された画像から、舌の範囲を読み取り、さらに7×7の計49区画に分けて舌苔付着度の評価とTCIの算出を行う。この手法には深層学習を用いており、舌の範囲の識別にはカメラの顔認識のような物体検出ネットワークを応用している。各区画の舌苔付着度は画像分類のためのネットワークを用い、49区画それぞれに対して歯科医師が行ったTCIにおける舌苔付着度の視覚的評価をもとに学習させている。
このようなスマートフォンの撮影機能を活用した技術は、日常の様々なシチュエーションで用いられており、上記の2つのシステムも既存の技術を応用したものである。しかしながら、歯科医療分野においては、その活用は発展途上と思われる。みなさまの持つアイデア、現場ニーズや技術シーズが繋がる一助となれば幸いである
超高齢社会に加え、昨今のCOVID-19感染拡大をうけ、多くの高齢者に対面での口腔管理を行うことが困難な状況になっている。特に口腔管理が必要となりうる在宅あるいは施設入居の患者においては、歯科医師や歯科衛生士以外においても口腔管理ができることが望ましい。さらに、個人での口腔管理も可能となれば、口腔リテラシーの向上にも寄与できるのではないだろうか。
近年、人工知能による画像解析技術は、医療分野にも応用され始めている。特に、スマートフォンにおける処理速度やカメラ性能の向上、ネットワーク通信の高速化により、撮影された画像から様々な情報を取得し、共有することが可能となった。「だれでも・どこでも・簡単に」実施可能なスマートフォンによる撮影は、視覚的評価も多い歯科医療分野においては、親和性が高いと考えられる。また、評価結果を視覚的に記録してその場で伝えることができれば、効果的なフィードバックが行えるのではないだろうか。
演者らは、口腔機能低下症の診査に関連し、咀嚼能力測定と舌苔付着評価のアプリケーションについて開発を行っており,すでに実用可能・手前段階にある。本シンポジウムでは、それらを踏まえ、評価診断支援や口腔リテラシー向上に寄与できるような仕組みを検討したい。
1)咀嚼能力測定
咀嚼機能評価用グミゼリー(UHA味覚糖,大阪)を用い、30回咀嚼後に吐き出されたグミゼリーの咬断片をスマートフォンにより撮影し、表面積増加量を咀嚼能率として評価する手法である。
撮影した画像からは、グミゼリー咬断片の面積や周長、色調などの情報を数値化できる。これらの数値情報を独立変数として用い、咀嚼能力自動解析装置(東京光電,東京)により測定された表面積増加量を目的変数とした回帰式を作成することで、咀嚼能率の予測が可能となる。
2)舌苔付着度の評価
突出させた舌をスマートフォンにより撮影し、Tongue Coating Index(以下、TCI)を評価する手法である。撮影された画像から、舌の範囲を読み取り、さらに7×7の計49区画に分けて舌苔付着度の評価とTCIの算出を行う。この手法には深層学習を用いており、舌の範囲の識別にはカメラの顔認識のような物体検出ネットワークを応用している。各区画の舌苔付着度は画像分類のためのネットワークを用い、49区画それぞれに対して歯科医師が行ったTCIにおける舌苔付着度の視覚的評価をもとに学習させている。
このようなスマートフォンの撮影機能を活用した技術は、日常の様々なシチュエーションで用いられており、上記の2つのシステムも既存の技術を応用したものである。しかしながら、歯科医療分野においては、その活用は発展途上と思われる。みなさまの持つアイデア、現場ニーズや技術シーズが繋がる一助となれば幸いである