The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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シンポジウム8
ガイドラインシンポジウム:急性期脳卒中患者の口腔管理に関するガイドライン

Sat. Jun 11, 2022 4:20 PM - 5:40 PM 第2会場 (りゅーとぴあ 5F 能楽堂)

座長:戸原 玄(東京医科歯科大学摂食嚥下リハビリテーション学分野 教授)、堀 一浩(新潟大学大学院医歯学総合研究科包括歯科補綴学分野 准教授)

企画:ガイドライン委員会
*認定制度指定研修

[SY8-4] 歯周疾患は、脳卒中発症と関連性があるか?

○水谷 慎介1,2 (1. 九州大学大学院歯学研究院附属OBT研究センター、2. 九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座 高齢者歯科学・全身管理歯科学分野)

【略歴】
2010年 北海道大学歯学部卒業
2011年 岡山大学病院歯科医師臨床研修修了
2014年 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科予防歯科学分野 早期修了
2014年 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科予防歯科学分野 助教
2016年 福岡歯科大学総合歯科学講座高齢者歯科学分野 助教
2018年 九州大学大学院歯学研究院附属OBT研究センター
     兼 同研究院口腔顎顔面病態学講座高齢者歯科学・全身管理歯科学分野 准教授
【抄録】
 脳卒中を原因として、各界の著名人が緊急搬送されたというニュースを耳にすることがある。時には、30代、40代でも発症することがあるため、その若さに驚きを覚えることもある。脳卒中は、症状が突然現れることが大きな特徴である。発症後に迅速な専門医の診断と治療を受けられれば、自立した生活に戻ることも可能であるが、重症の場合には要介護状態になり、時には命に関ることも少なくない。脳卒中患者の重症度は様々であり、日常生活動作能力の程度も多様であるため、歯周疾患をはじめとする口腔環境や口腔機能はそれらの要因に大きく影響を受け、時には口腔管理が困難になることもある。それゆえ、脳卒中に対する対策は、医療・福祉・介護すべての分野において重要な課題の一つであり、また、歯科とも密接な関連がある。
 高血圧、不整脈、糖尿病、喫煙、肥満などが代表的な脳卒中発症の危険因子である。一方、歯周病との関連に関しては、多くのコホート研究があり、メタ解析を含むシステマティックレビューも数編報告されている。2編のメタ解析を行った研究のうち、Fagundes NCF. et al.は、歯周炎を有する者のRRは1.88 (95%CI=1.55–2.28)と報告し(Vasc Health Risk Manag, 2019)、また、Leira Y. et al.は、2.52 (95%CI=1.77–3.58)との報告しており(Eur J Epidemiol, 2017)、有意に脳卒中のリスクが高いことが示されている。一方で、上記レビューの報告以降に発行されたコホート研究5編のうち、1編(Lin HW. et al., 2019)は歯周炎と脳卒中の発症に関連がある(HR = 1.16; 95%CI=1.04–1.29)と報告しており、別の1編(Cho HJ. et al., 2021)では、重度の歯周炎を有する者は健康な者と比較し、6%リスクが高くなる (HR, 1.06; 95% CI, 1.01– 1.11)が、中等度歯周炎ではそのような関連は認められなかったと報告している。残り3編(Holmlund A. et al., 2017; Bengtsson VW. et al., 2021; Chang Y. et al., 2021)では有意な関連性を認めなかったと報告している。
 本シンポジウムでは、ガイドライン作成にあたり、根拠となった脳卒中発症と歯周疾患との関連に関する研究結果を紹介し、歯科からアプローチできる脳卒中予防の可能性について皆様と考えてみたい。