[SY9-1] 咀嚼嚥下のプロセスを生体記録と食塊物性から評価する
【略歴】
2012年3月 新潟大学 大学院 医歯学総合研究科 修了(歯学博士)
2012年4月~2015年3月 新潟大学 医歯学総合病院 摂食嚥下機能回復部 助教
2014年6月~2015年5月 University of Manchester, Research fellow
2015年4月~現在 新潟大学 医歯学総合病院 摂食嚥下機能回復部 講師
【所属学会】
日本摂食嚥下リハビリテーション学会(評議員,認定士)
日本顎口腔機能学会(評議員)
日本補綴歯科学会(専門医)
European Society for Swallowing Disorders
他
【研究者情報URL】
https://researchmap.jp/jin-m
2012年3月 新潟大学 大学院 医歯学総合研究科 修了(歯学博士)
2012年4月~2015年3月 新潟大学 医歯学総合病院 摂食嚥下機能回復部 助教
2014年6月~2015年5月 University of Manchester, Research fellow
2015年4月~現在 新潟大学 医歯学総合病院 摂食嚥下機能回復部 講師
【所属学会】
日本摂食嚥下リハビリテーション学会(評議員,認定士)
日本顎口腔機能学会(評議員)
日本補綴歯科学会(専門医)
European Society for Swallowing Disorders
他
【研究者情報URL】
https://researchmap.jp/jin-m
【抄録】
咀嚼は固形食品を適切に摂取するために必要不可欠な過程である.食品を咀嚼,嚥下する際には,歯と咀嚼筋の作用による食品の咬断,粉砕に加えて,舌,口唇,頬といった軟組織を含む顎口腔領域の機能が調和することによって成される食塊形成や移送過程が必須である.食塊形成時には,粉砕された食品が唾液と混和されることにより,その過程で刻々と変化する食塊の大きさ,温度,物性などから得られる感覚情報が処理され,咀嚼運動のパターンが変化していると考えられる.この運動基本パターンは主に脳幹に存在するCPGによって制御されているが,咀嚼運動の誘発や変調は,高次脳を司る大脳皮質をも介した感覚と運動の統合機能によって巧みに調整されている.
これまでに,咀嚼による食品の粉砕に伴う筋活動様式や顎運動の変化を筋電図や動作解析の手法を用いて評価している研究がいくつか存在する.一方で,咀嚼から嚥下に至る過程で形成される食塊自体は直接可視化できないため,画像評価手法を併用する必要がある.嚥下造影検査を用いて,咀嚼中の食塊形成と移送に関わる舌運動や口腔顔面運動が評価されている.舌は顎舌骨筋を介して舌骨に,顎二腹筋等の咀嚼関連の筋も舌骨に付しており,舌の位置の保持や運動には舌骨上筋の活動の寄与が大きい.当分野では,舌骨上筋の筋電図と顎運動を同時記録することで,咀嚼時の食塊形成や移送に対する舌骨上筋活動の寄与について定量評価を試みている.
一方で,嚥下をプロセスの終点とした場合,咀嚼運動は嚥下するために有利な食塊を形成している過程と考えることもできる.過去には,嚥下するために適した絶対的な食塊物性,すなわち食塊の嚥下閾値が存在すると報告されてきた.固形食品の摂取を考えた場合,咬断,粉砕し,嚥下しやすい食塊物性を咀嚼することで得ている事実に疑いの余地はない.しかしながら,同一食品を誰もが同様に摂取しているわけではなく,咀嚼様式に個人差が認められることは日常生活においても経験されることである.近年,当分野で行った咀嚼,嚥下運動の記録と咀嚼された食塊物性評価では,誰もが同じ食塊物性で嚥下しているわけではないことが示されている.
本セッションの前段では,咀嚼から嚥下過程における食塊形成や移送のプロセスを筋電図や顎運動の生体記録から読み解く試みを,後段では得られた食塊物性の測定から見える摂取様式の個人差や,その個人差の要因として考えられる口腔機能との関連についていくつかのデータをお示するとともに,今後の咀嚼嚥下に関わる研究の展望を考察する.
咀嚼は固形食品を適切に摂取するために必要不可欠な過程である.食品を咀嚼,嚥下する際には,歯と咀嚼筋の作用による食品の咬断,粉砕に加えて,舌,口唇,頬といった軟組織を含む顎口腔領域の機能が調和することによって成される食塊形成や移送過程が必須である.食塊形成時には,粉砕された食品が唾液と混和されることにより,その過程で刻々と変化する食塊の大きさ,温度,物性などから得られる感覚情報が処理され,咀嚼運動のパターンが変化していると考えられる.この運動基本パターンは主に脳幹に存在するCPGによって制御されているが,咀嚼運動の誘発や変調は,高次脳を司る大脳皮質をも介した感覚と運動の統合機能によって巧みに調整されている.
これまでに,咀嚼による食品の粉砕に伴う筋活動様式や顎運動の変化を筋電図や動作解析の手法を用いて評価している研究がいくつか存在する.一方で,咀嚼から嚥下に至る過程で形成される食塊自体は直接可視化できないため,画像評価手法を併用する必要がある.嚥下造影検査を用いて,咀嚼中の食塊形成と移送に関わる舌運動や口腔顔面運動が評価されている.舌は顎舌骨筋を介して舌骨に,顎二腹筋等の咀嚼関連の筋も舌骨に付しており,舌の位置の保持や運動には舌骨上筋の活動の寄与が大きい.当分野では,舌骨上筋の筋電図と顎運動を同時記録することで,咀嚼時の食塊形成や移送に対する舌骨上筋活動の寄与について定量評価を試みている.
一方で,嚥下をプロセスの終点とした場合,咀嚼運動は嚥下するために有利な食塊を形成している過程と考えることもできる.過去には,嚥下するために適した絶対的な食塊物性,すなわち食塊の嚥下閾値が存在すると報告されてきた.固形食品の摂取を考えた場合,咬断,粉砕し,嚥下しやすい食塊物性を咀嚼することで得ている事実に疑いの余地はない.しかしながら,同一食品を誰もが同様に摂取しているわけではなく,咀嚼様式に個人差が認められることは日常生活においても経験されることである.近年,当分野で行った咀嚼,嚥下運動の記録と咀嚼された食塊物性評価では,誰もが同じ食塊物性で嚥下しているわけではないことが示されている.
本セッションの前段では,咀嚼から嚥下過程における食塊形成や移送のプロセスを筋電図や顎運動の生体記録から読み解く試みを,後段では得られた食塊物性の測定から見える摂取様式の個人差や,その個人差の要因として考えられる口腔機能との関連についていくつかのデータをお示するとともに,今後の咀嚼嚥下に関わる研究の展望を考察する.