[認定P-3] ステロイドおよびビスフォスフォネート製剤内服中に発症した歯性感染症に対し消炎治療と抜歯を実施した1例
【緒言・目的】
ステロイド内服患者においては易感染性に注意が必要であり,歯性感染症を契機に重篤な感染症に発展することがある。今回,自己免疫疾患に対しステロイドおよびステロイド性骨粗鬆症予防目的にビスフォスフォネート製剤を内服中に顎骨周囲炎を発症した1 例を経験したので報告する。
【症例および経過】
83 歳,男性。水疱性類天疱瘡,ステロイド性骨粗鬆症の既往あり。水疱性類天疱瘡に対し2021年12月よりプレドニゾロンの投与を開始され,2022年1月よりステロイド性骨粗鬆症予防目的にアレンドロン酸ナトリウムを内服していた。2022年5月上旬に左側下顎歯肉の腫脹を自覚した。その後疼痛が出現し,義歯装着が困難になったため5月10日にかかりつけ歯科医院を受診された。義歯調整と抗菌薬投与を受けるも症状が改善せず,5月18日に当院を初診された。左側頬部から顎下部にかけて皮膚発赤を伴う腫脹を認め,波動を触知した。上顎,下顎ともに総義歯を装着していたが,義歯床下に複数の残根が存在した。43は歯根破折しており,周囲歯肉の発赤腫脹および歯肉溝からの排膿を認めた。血液検査で炎症マーカーが高値であり,造影CTで骨膜下膿瘍の形成を認めたため,消炎治療目的に入院加療を行う方針とした。同日口腔内消炎術および下顎義歯調整を実施した。抗菌薬はCTRX 2g/日を静注した。5月23日にドレーンを抜去し,血液検査で炎症反応改善にて同日退院となった。退院後に43抜歯術を施行。感染対策として術前1時間前にAMPC 250mgを投与し,術後はAMPC 750mg/日を2日間投与した。その他の残根も同様の感染対策を実施して抜歯した。抜歯後の経過に問題はなく,薬剤関連顎骨壊死の発症も認めなかった。抜歯窩の治癒確認後,2022年7月に上下顎の総義歯を新製し装着した。現在も定期的な口腔内管理を継続している。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
ステロイドおよびビスフォスフォネート製剤投与中に発症した歯性感染症から,顎骨周囲炎にまで発展した症例。高齢者は,全身疾患の発症に伴って感染リスクが上昇することがある。歯性感染症のリスクを有する歯については可能な限り抜歯しておく,定期的に適切な口腔内管理を実施することが重要であると考えられた。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)
ステロイド内服患者においては易感染性に注意が必要であり,歯性感染症を契機に重篤な感染症に発展することがある。今回,自己免疫疾患に対しステロイドおよびステロイド性骨粗鬆症予防目的にビスフォスフォネート製剤を内服中に顎骨周囲炎を発症した1 例を経験したので報告する。
【症例および経過】
83 歳,男性。水疱性類天疱瘡,ステロイド性骨粗鬆症の既往あり。水疱性類天疱瘡に対し2021年12月よりプレドニゾロンの投与を開始され,2022年1月よりステロイド性骨粗鬆症予防目的にアレンドロン酸ナトリウムを内服していた。2022年5月上旬に左側下顎歯肉の腫脹を自覚した。その後疼痛が出現し,義歯装着が困難になったため5月10日にかかりつけ歯科医院を受診された。義歯調整と抗菌薬投与を受けるも症状が改善せず,5月18日に当院を初診された。左側頬部から顎下部にかけて皮膚発赤を伴う腫脹を認め,波動を触知した。上顎,下顎ともに総義歯を装着していたが,義歯床下に複数の残根が存在した。43は歯根破折しており,周囲歯肉の発赤腫脹および歯肉溝からの排膿を認めた。血液検査で炎症マーカーが高値であり,造影CTで骨膜下膿瘍の形成を認めたため,消炎治療目的に入院加療を行う方針とした。同日口腔内消炎術および下顎義歯調整を実施した。抗菌薬はCTRX 2g/日を静注した。5月23日にドレーンを抜去し,血液検査で炎症反応改善にて同日退院となった。退院後に43抜歯術を施行。感染対策として術前1時間前にAMPC 250mgを投与し,術後はAMPC 750mg/日を2日間投与した。その他の残根も同様の感染対策を実施して抜歯した。抜歯後の経過に問題はなく,薬剤関連顎骨壊死の発症も認めなかった。抜歯窩の治癒確認後,2022年7月に上下顎の総義歯を新製し装着した。現在も定期的な口腔内管理を継続している。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
ステロイドおよびビスフォスフォネート製剤投与中に発症した歯性感染症から,顎骨周囲炎にまで発展した症例。高齢者は,全身疾患の発症に伴って感染リスクが上昇することがある。歯性感染症のリスクを有する歯については可能な限り抜歯しておく,定期的に適切な口腔内管理を実施することが重要であると考えられた。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)