The 34th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター2

Fri. Jun 16, 2023 12:00 PM - 1:30 PM ポスター会場 (1階 G3)

[認定P-8] 無歯顎高齢患者に対し、下顎2-IODを用いて咬合力、咀嚼能力と摂取食品の増加、体重安定を経験した一例

○高野 悟1、中川 量晴2 (1. アベニュー歯科クリニック大泉学園、2. 東京医科歯科大学)

無歯顎高齢患者に対し、下顎2-IODを用いて咬合力、咀嚼能力と摂取食品の増加、体重安定を経験した一例〇高野 悟、中川 量晴東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野医療法人社団綾泉会アベニュー歯科クリニック大泉学園 【緒言・目的】高齢者における咬合力の低下は、栄養状態の悪化や身体機能の低下につながる。2002年モントリオールにおいて、2本のインプラントに支えられたオーバーデンチャー(2-IOD)は無歯顎に対する標準的治療法であるとの提言がなされている(McGill consensus)。今回、体重減少と痛みによる摂食障害を訴える全部床義歯による補綴治療がされた患者に、下顎2-IODにて補綴治療を行ったところ、咬合力のみならず咀嚼能力、食生活の改善および体重減少が停止した症例を経験したので報告する。 【症例】85歳男性。食事が痛く辛い。身長165cm 体重60kg、BMI 22 。10年ほど前は体重70kg程度あったが、毎年漸減傾向あり。口腔内所見は上下無歯顎であった。下顎義歯が食事中動き、薄い粘膜下の骨を義歯内面が擦過および過圧することで痛みを招き、食事を困難にしていると判断した。そこで、2本のインプラントを前歯部に埋入し、下顎総義歯の維持を図ることを計画した。摂取可能率は食品アンケートで求め、初診時はドーナツとごはんのみ摂取可能な状態(10%)であった。咬合力測定はデンタルプレスケールⅡ(GC)を、咀嚼機能測定では、グルコラム(GC)を使用しグルコセンサーGS-2(GC)で測定した。咀嚼能力は64mg/dl、最大咬合力は95.5Nであり、口腔機能低下症の診断基準を下回っていた。【経過】高齢者の外科処置に対し、バイタルをモニター下で局所麻酔により埋入手術を行った。残存骨内にジェネシオplus3.8(GC)で初期固定を得、ただちにロケーターアバットメントを接続した。旧義歯には十分なリリーフを付与し、3カ月の待時期間ののち新義歯の作成を開始した。ロケーターディスクは、沈下対策として1週間通常の総義歯として使用させてから口腔内直接法で装着した。浮き上がりのない義歯となったために、治療後は食事中の痛みが解消し、摂取可能な食品が55%まで向上、使用してから半年ごろには減少傾向にあった体重が維持できていることが患者より報告された。装着後6ヵ月の測定で、咀嚼能力、咬合力ともに口腔機能低下症と診断される数値から回復し、正常値範囲となった。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。【考察】疼痛で摂食障害が生じている場合、義歯作成時の選択肢の一つとして、IODは有効な治療法となることが改めて確認された。さらに、食事選択は栄養面の重要なファクターであり、体重減少が現れていた患者において、食事意欲の増進と栄養摂取によって減少傾向にあった体重が維持できていることが、フレイル防止の観点からもIODの有用性を示唆している。 (COI 開示:なし)(倫理審査対象外)