[認定P-14] 摂食機能訓練が著効しなかった嚥下障害に対し、原因疾患に対する治療アプローチで嚥下機能が改善した症例
【緒言・目的】摂食嚥下リハビリテーションが著効しなかった嚥下機能低下と体重減少に対し、脳神経内科へ対診し、パーキンソン病(PD)に対する治療により嚥下機能が改善した症例を経験したので報告する。
【症例および経過】80歳、男性。食事が飲み込みにくいとの訴えがあり、2022年6月29日高良台リハビリテーション病院歯科嚥下外来紹介受診となった。既往歴は前立腺肥大のみであった。自宅では軟飯軟菜食を自力摂取されていたが、摂取量が確保できておらず、BMIは17.3kg/m2であった。上下顎ともに義歯は不適合で、グルコセンサーによる咀嚼能力124mg/dL、舌圧35.9kPaであった。嚥下造影(VF)検査では、中等度の咽頭残留が生じ、追加嚥下時や飲水時に喉頭侵入がみられた。食形態は嚥下調整食4(学会分類2021)、一口量の調整と複数回嚥下の指導を行い、摂食機能療法では間接的嚥下訓練(口腔体操、喉頭挙上訓練)および自主訓練を指導した。8月17日VF検査にて再評価行うも、嚥下機能改善なく、食事時間がかかり体重は減少傾向で、嚥下障害の原因精査目的に脳神経内科へ対診を行った。HDS-R20点、上肢に左優位の固縮、寡動、やや小刻み歩行を認め、PD疑いでL-dopa200mg内服開始となった。9月14日には、食事量も増加、むせや喀痰量は減少し、体重は初診時42.6kgから44.6kgへ増加し、BMIは18.1kg/m2となった。9月29日VF検査では、少量の咽頭残留は生じるものの、飲水時の喉頭侵入所見はみられず、咽頭期機能は改善傾向にあり、10月5日摂食機能療法を終了した。L-dopa内服加療は嚥下障害および寡動に効果があり、2023年1月の咀嚼能力120mg/dL、舌圧38.1kPa、食形態は嚥下調整食4、とろみなし水分を摂取している。BMI18.7kg/m2で、明らかな嚥下機能低下や肺炎はみられていない。なお、本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】今回の症例は、明らかな嚥下障害の原因となる疾患の診断はなく、高齢者の嚥下障害に対し摂食機能療法介入したが改善が乏しかった。動作緩慢、体重減少など全身的所見から嚥下障害の原因としてPDが疑われ、医科対診を行った。結果的に、L-dopa内服加療による内科的治療アプローチが有効であった。
(COI開示なし)
(倫理審査対象外)
【症例および経過】80歳、男性。食事が飲み込みにくいとの訴えがあり、2022年6月29日高良台リハビリテーション病院歯科嚥下外来紹介受診となった。既往歴は前立腺肥大のみであった。自宅では軟飯軟菜食を自力摂取されていたが、摂取量が確保できておらず、BMIは17.3kg/m2であった。上下顎ともに義歯は不適合で、グルコセンサーによる咀嚼能力124mg/dL、舌圧35.9kPaであった。嚥下造影(VF)検査では、中等度の咽頭残留が生じ、追加嚥下時や飲水時に喉頭侵入がみられた。食形態は嚥下調整食4(学会分類2021)、一口量の調整と複数回嚥下の指導を行い、摂食機能療法では間接的嚥下訓練(口腔体操、喉頭挙上訓練)および自主訓練を指導した。8月17日VF検査にて再評価行うも、嚥下機能改善なく、食事時間がかかり体重は減少傾向で、嚥下障害の原因精査目的に脳神経内科へ対診を行った。HDS-R20点、上肢に左優位の固縮、寡動、やや小刻み歩行を認め、PD疑いでL-dopa200mg内服開始となった。9月14日には、食事量も増加、むせや喀痰量は減少し、体重は初診時42.6kgから44.6kgへ増加し、BMIは18.1kg/m2となった。9月29日VF検査では、少量の咽頭残留は生じるものの、飲水時の喉頭侵入所見はみられず、咽頭期機能は改善傾向にあり、10月5日摂食機能療法を終了した。L-dopa内服加療は嚥下障害および寡動に効果があり、2023年1月の咀嚼能力120mg/dL、舌圧38.1kPa、食形態は嚥下調整食4、とろみなし水分を摂取している。BMI18.7kg/m2で、明らかな嚥下機能低下や肺炎はみられていない。なお、本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】今回の症例は、明らかな嚥下障害の原因となる疾患の診断はなく、高齢者の嚥下障害に対し摂食機能療法介入したが改善が乏しかった。動作緩慢、体重減少など全身的所見から嚥下障害の原因としてPDが疑われ、医科対診を行った。結果的に、L-dopa内服加療による内科的治療アプローチが有効であった。
(COI開示なし)
(倫理審査対象外)