[認定P-18] 繰り返す誤嚥性肺炎での入院を契機に食形態が下げられたが歯科の介入により普通食を再開できた症例
【緒言】 誤嚥性肺炎で入院し,退院後に在宅や施設に戻る場合,必要以上に制限された食形態が再評価されずに継続されることがある。今回,液体誤嚥の予防に努め,誤嚥性肺炎を生じることなく入院前摂取していた普通食を再開できた1例を経験したので報告する。 【症例および経過】 83歳,男性。認知症,心不全,咽頭・食道・胃がん術後,脊柱管狭窄症,脳梗塞疑いの既往あり。患者は誤嚥性肺炎で2回入院した。2回目の入院前まで普通食・とろみなしの液体を摂取していたが,入院中に医師の指示でとろみペースト食・とろみつきの液体に食形態が下げられた。退院後もその食形態は継続し,著しく体重が減少した。2022年6月に嚥下機能評価・誤嚥性肺炎の予防を希望し,訪問歯科を受診した。 患者は,やせ型の体格,意志疎通良好,軽度の記憶障害を認めた。姿勢保持良好で,上下肢の運動麻痺や上肢の筋強剛は認めず,心不全により在宅酸素療法を受けていた。 嚥下内視鏡(VE)検査では,ペースト・ゼリー食は誤嚥なく摂取できたが,液体の不顕性誤嚥を認めた。全身所見から,肺炎発症後の新たな変性疾患や脳血管疾患の発症は低いと考えられ,肺炎発症前からの嚥下機能の顕著な悪化はないと判断した。これより,固形物は普通食の再開が見込まれた。一方,誤嚥性肺炎の主たる原因として液体誤嚥を疑い,呼吸機能の低下も鑑みて液体誤嚥の予防が必要と考えた。肺炎予防のために液体のとろみ付与やゼリー化,口腔ケアなどを指導した。 同年7月,安全に普通食を摂取できるか確認のためVE検査を実施した。固形物すべて食塊形成・送り込み良好で,誤嚥なく摂取できたため,普通食の再開を許可した。「液体の自己調整が難しい」との訴えがあったため,日常的に摂取するものはヘルパーの介助でとろみ付与を行い,とろみなしの液体摂取を少量に限って許可した。その後,患者は体調不良なく経過し,摂取カロリー量は漸増した。 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。 【考察】 全身所見や既往および嚥下機能検査から,繰り返す誤嚥性肺炎は液体の不顕性誤嚥が原因と考え,普通食を再開し,摂取カロリー量の増加に寄与できた。液体のとろみ付与やゼリー化,口腔ケアなどを指導し,誤嚥性肺炎の予防を図った。今後も引き続き肺炎予防を継続しながら,定期的な経過観察を要すると考えられる。 (COI開示:なし) (倫理審査対象外)