The 34th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター6

Fri. Jun 16, 2023 12:00 PM - 1:30 PM ポスター会場 (1階 G3)

[認定P-32] 誤嚥性肺炎を繰り返す脳卒中後遺症患者に対し,訪問歯科診療にて義歯を新製した症例

○赤木 郁生1、平塚 正雄1,2 (1. 医療法人社団秀和会 小倉南歯科医院、2. 沖縄県歯科医師会立沖縄県口腔保健医療センター)

【緒言・目的】
 誤嚥性肺炎を繰り返す要介護高齢者では主治医を含めた多職種連携・協働による情報共有が必要となる。今回,誤嚥性肺炎を繰り返す脳卒中後遺症患者に訪問歯科診療にて義歯を新製し,良好な経過を得た1例を経験したので報告する。

【症例および経過】
 82歳,男性。高血圧,糖尿病,肺気腫,心房細動および小脳梗塞の既往あり。2015年4月に小脳梗塞後遺症による嚥下障害で胃瘻となる。2016年5月嚥下機能改善術(輪状咽頭切断術,喉頭挙上術,気管切開術)を受け,経口摂取可能となった。2021年8月誤嚥性肺炎から膿胸を発症し入院,同年12月に退院するも4か月間の入院中,義歯未装着のため装着困難となり,家族より訪問歯科診療の依頼を受けた。初診時の口腔内所見では口腔衛生状態が不良で中等度の歯周炎を認め,主訴部位の左上34には歯髄に達するう蝕が認められた。上下顎義歯は不適合状態で鉤歯の傾斜により装着は困難な状況であった。咬合支持はEichner分類C1であった。RSSTは2回/30秒。口腔内の状況を本人と家族に説明し治療を計画した。左上34は抜髄後に根面被覆を行い,上下顎義歯の新製を行った。新義歯装着後の経過は良好であった。多職種連携により言語聴覚士が中心となって摂食機能療法を行い,全身状態の安定を確認しながら経口摂取に移行した。1か月後には3食経口摂取が可能となった。BMIは18.90から19.60,FOISはレベル2からレベル6に改善した。その後,1回/月の定期的な訪問歯科診療による歯科衛生士と口腔健康管理を行い,口腔衛生状態と口腔機能は良好に維持されている。

なお,本症例の発表について患者本人から文書による同意を得ている。

【考察】
 誤嚥性肺炎の再発防止が特に必要な脳卒中後遺症の症例であったが,訪問歯科診療による治療と指導および言語聴覚士,看護師を含めた多職種連携・協働により良好なQOLの改善が得られた。義歯新製による適切な咬合位の回復で咀嚼機能が改善し経口摂取再開に繋がった。訪問歯科診療による口腔健康管理は誤嚥性肺炎の予防に貢献できたと考えられる。
(COI開示:なし, 倫理審査対象外)