[摂食更新P-9] 石川県高度・専門医療人材養成支援事業の展開
~ 摂食嚥下に関する教育活動の3年間 ~
【目的】摂食嚥下機能に問題を抱える人を地域でサポートするためには,病院だけでなく地域の医療および介護従事者が関連する知識を共有し,基本的手技を習得する必要がある。石川県では,高度・専門医療人材の養成・確保を目的に,研究会等のグループが行う活動に対して補助対象事業を募っている。演者は,2019年より本制度を利用して県内の摂食嚥下診療と食支援に従事する医療・介護従事者を対象に,その知識と技能の教育・啓発を行っている。今回,その概要と業績について報告する。【方法】演者が代表を務める「食力の会」の発展事業として,摂食嚥下診療と食支援に特化した高度・専門医療人材養成支援事業の3年間を振り返り,これまでの業績について集計した。【結果と考察】2011年に演者の企画で発足した「食力の会」は,能登地域の歯科医師・歯科衛生士・管理栄養士・言語聴覚士・看護師・介護士ら約40名で構成され,これまで,近隣の病院や施設で提供されている食形態の相違を整合するために「食形態マップ」を作成するなど,病院や施設間のシームレスな食支援の連携をめざして取り組んできた。やがて,能登地域に留まらず,県内全域に「食力の会」の取り組みが浸透するとともに2019年より石川県の助成事業として認可された。同時に,事業体制も石川県歯科医師会が共同となることで,歯科医師や歯科衛生士の参加が増え,歯科医療従事者に対する摂取食嚥下診療と食支援に関する教育も行っている。臨床経験や職種によって食べることに対する知識や考え方,方針は様々であるため,事業の方向性を逸脱しないために教育研修シラバスを作成した。シラバスは,基礎編と応用編を併せて全20章から成り,研修開催毎に確認テストを実施し,段階的に学習するプログラムとなっている。基礎編は,①老化について,②高齢者の特徴,③バイタルサインの読み方,④血液データの読み方,⑤栄養の評価,⑥摂食嚥下障害概論,⑦解剖と生理,⑧薬剤の知識,⑨疾患別にみる摂食嚥下障害,⑩食支援の10章で構成される。一方,応用編は,⑪問診のポイント,⑫身体・神経学的所見,⑬胸部・頚部聴診,⑭嚥下スクリーニングテスト,⑮嚥下内視鏡検査,⑯嚥下造影検査,⑰間接訓練と直接訓練,⑱食事場面の観察ポイント,⑲食事介助と支援の在り方,⑳症例検討の10章で構成される。さらに,歯科医師に限るが,これら全過程を修了するとVE実技研修を受講する流れとなっている。2019年より開始した本事業は4年目を迎え,年間約100人が受講している。また,VE実技研修を受講する歯科医師数も増加しており,年間約20人が終了し,継続参加希望者も多く,今後も継続して,石川県の摂食嚥下診療と食支援の基盤として地域の専門職連携の充実と住民の摂食嚥下障害をサポートしたいと考える。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)