[摂食更新P-17] 胃瘻造設患者に嚥下機能評価を行い経口摂取再開に至った一症例
【緒言・目的】
高齢者施設に入所中の胃瘻増設患者に介入し,嚥下機能評価およびリハビリテーションを行うことにより,禁食から脱した症例を報告する。
【症例および経過】
介護老人福祉施設に入所中の85歳女性。平成29年1月に脳幹梗塞を発症し急性期病院に入院した。リハビリ病院へ転院し嚥下訓練を受けるも,嚥下機能は充分に回復せず,同年5月に胃瘻造設となった。その後は老健施設を経て現在の施設に入所した。既往には脳梗塞(右放線冠),房室ブロック,ペースメーカー留置等がある。左上下肢麻痺,廃用による右上下肢筋力低下のため日常生活は全介助を要する。(要介護度5,意識レベルⅠ,寢たきり度C2,認知症自立度Ⅱa) リハビリ病院では直接訓練を受けていたが,施設入所後からは禁食となっていた。平成30年8月,家族の経口摂取への強い希望により訪問診療の依頼を受けた。初回の嚥下内視鏡検査では,嚥下反射遅延,食塊や唾液のコントロール不良,嚥下圧低下,唾液の咽頭貯留や誤嚥,従命不良等が認められた。偽性球麻痺を呈する先行期~咽頭期の重い嚥下障害であった。体幹角度の調整では誤嚥を防止できなかったが,右完全側臥位で再検査を行ったところ,誤嚥を防止することができた。 家族や主治医と相談し,お楽しみレベルでの経口摂取を継続することを目標に完全側臥位法での訓練計画を作成した。間接訓練は準備期の機能維持を目的として,口腔周囲筋の運動を行った。また,咳払いが弱いため,咽頭内クリアランスを高めるため発語(童謡の歌唱)や空嚥下の訓練を行った。直接訓練はゼリー系食品を用いた。コロナウイルス感染拡大や心疾患の増悪等により訓練が途切れることもあったが,主治医と連携を取りながら訓練を継続している。(週1回,ゼリー系食品を約30g摂取)。体力低下が見られるが,現在まで肺炎を起こさず経過しており,患者は食べる喜びを口にしている。なお,本報告について家族から同意を得ている。
【考察】
高齢者施設に入所している胃瘻増設患者は,適切な嚥下機能評価が受けられず禁食となっている症例が多い。本症例のように専門的なアプローチで経口摂取を再開できる症例もあることから,地域の高齢者施設と連携して摂食嚥下障害へ積極的に介入していくことが必要であると考える。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)
高齢者施設に入所中の胃瘻増設患者に介入し,嚥下機能評価およびリハビリテーションを行うことにより,禁食から脱した症例を報告する。
【症例および経過】
介護老人福祉施設に入所中の85歳女性。平成29年1月に脳幹梗塞を発症し急性期病院に入院した。リハビリ病院へ転院し嚥下訓練を受けるも,嚥下機能は充分に回復せず,同年5月に胃瘻造設となった。その後は老健施設を経て現在の施設に入所した。既往には脳梗塞(右放線冠),房室ブロック,ペースメーカー留置等がある。左上下肢麻痺,廃用による右上下肢筋力低下のため日常生活は全介助を要する。(要介護度5,意識レベルⅠ,寢たきり度C2,認知症自立度Ⅱa) リハビリ病院では直接訓練を受けていたが,施設入所後からは禁食となっていた。平成30年8月,家族の経口摂取への強い希望により訪問診療の依頼を受けた。初回の嚥下内視鏡検査では,嚥下反射遅延,食塊や唾液のコントロール不良,嚥下圧低下,唾液の咽頭貯留や誤嚥,従命不良等が認められた。偽性球麻痺を呈する先行期~咽頭期の重い嚥下障害であった。体幹角度の調整では誤嚥を防止できなかったが,右完全側臥位で再検査を行ったところ,誤嚥を防止することができた。 家族や主治医と相談し,お楽しみレベルでの経口摂取を継続することを目標に完全側臥位法での訓練計画を作成した。間接訓練は準備期の機能維持を目的として,口腔周囲筋の運動を行った。また,咳払いが弱いため,咽頭内クリアランスを高めるため発語(童謡の歌唱)や空嚥下の訓練を行った。直接訓練はゼリー系食品を用いた。コロナウイルス感染拡大や心疾患の増悪等により訓練が途切れることもあったが,主治医と連携を取りながら訓練を継続している。(週1回,ゼリー系食品を約30g摂取)。体力低下が見られるが,現在まで肺炎を起こさず経過しており,患者は食べる喜びを口にしている。なお,本報告について家族から同意を得ている。
【考察】
高齢者施設に入所している胃瘻増設患者は,適切な嚥下機能評価が受けられず禁食となっている症例が多い。本症例のように専門的なアプローチで経口摂取を再開できる症例もあることから,地域の高齢者施設と連携して摂食嚥下障害へ積極的に介入していくことが必要であると考える。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)