[O1-1] 口腔乾燥症患者に対する口腔粘膜マッサージの有用性に関する研究
【目的】
口腔乾燥症に対する唾液腺マッサージでは,従来より大唾液腺の耳下腺,顎下腺,
舌下腺を目安に,口腔外からのマッサージが施行されている。しかし,高齢者にとってはその適切な手技は容易ではなく,動脈硬化傾向のある患者での不適切な顎下腺マッサージは,頸動脈プラークの剥離の可能性もある。一方,小唾液腺の賦活化を目的とした口腔内からの口腔粘膜マッサージは,手技が容易で安全である。また,口腔乾燥を訴える患者の多くは安静時の口腔乾燥感であり,これには小唾液腺の方が関係しているとされる。そこで本研究では,口腔粘膜マッサージの有用性に関して口腔外マッサージと比較検討した。
【方法】
対象は,当院高齢者歯科を受診した口腔乾燥症患者18名(男性3名,女性15名,平均年齢72.5±7.4歳)。対象者を口腔粘膜マッサージ群10名と口腔外マッサージ群8名の2群に無作為割り付けし,非盲検ランダム化比較試験を行った。各群の対象者はそれぞれのマッサージ手技について指導を受けた後,8週間の自宅訓練を1日3回施行した。訓練施行前と施行4週後,8週後の3時点で,VASによる口腔乾燥感,安静時唾液量(吐唾法),刺激時唾液量(ガムテスト),口腔湿潤度を測定し,それらの結果を統計学的に比較検討した。
【結果と考察】
口腔粘膜マッサージ群と口腔外マッサージ群の訓練前の年齢,性,VASに明らかな差は認めなかった。この2群間において,口腔乾燥感の訓練後4週,8週のVASの改善率を含め全ての項目に有意差は認めなかった。口腔粘膜マッサージ群のVASは,訓練施行前平均値69.5±15.5,4週後53.5±18.8,8週後49.5±19.4と有意に低下がみられ(p<0.01),安静時唾液量(g/分)も訓練施行前平均値0.04±0.07g,4週後0.08±0.05g,8週後0.12±0.11gと有意な増加を示した(p<0.05)。一方,口腔外マッサージ群でのVASも,訓練施行前平均値67.0±18.2,4週後43.5±27.3,8週後42.1±28.0と有意な低下を認めた(p<0.05)。本結果から口腔乾燥症に対して,口腔粘膜マッサージも有用なアプローチとなりうる可能性が示唆された。今後,症例数を増やしさらなる効果の検証を行う予定である。
(COI開示:なし)
(北海道大学病院自主臨床研究倫理審査委員会承認番号 019-0473)
口腔乾燥症に対する唾液腺マッサージでは,従来より大唾液腺の耳下腺,顎下腺,
舌下腺を目安に,口腔外からのマッサージが施行されている。しかし,高齢者にとってはその適切な手技は容易ではなく,動脈硬化傾向のある患者での不適切な顎下腺マッサージは,頸動脈プラークの剥離の可能性もある。一方,小唾液腺の賦活化を目的とした口腔内からの口腔粘膜マッサージは,手技が容易で安全である。また,口腔乾燥を訴える患者の多くは安静時の口腔乾燥感であり,これには小唾液腺の方が関係しているとされる。そこで本研究では,口腔粘膜マッサージの有用性に関して口腔外マッサージと比較検討した。
【方法】
対象は,当院高齢者歯科を受診した口腔乾燥症患者18名(男性3名,女性15名,平均年齢72.5±7.4歳)。対象者を口腔粘膜マッサージ群10名と口腔外マッサージ群8名の2群に無作為割り付けし,非盲検ランダム化比較試験を行った。各群の対象者はそれぞれのマッサージ手技について指導を受けた後,8週間の自宅訓練を1日3回施行した。訓練施行前と施行4週後,8週後の3時点で,VASによる口腔乾燥感,安静時唾液量(吐唾法),刺激時唾液量(ガムテスト),口腔湿潤度を測定し,それらの結果を統計学的に比較検討した。
【結果と考察】
口腔粘膜マッサージ群と口腔外マッサージ群の訓練前の年齢,性,VASに明らかな差は認めなかった。この2群間において,口腔乾燥感の訓練後4週,8週のVASの改善率を含め全ての項目に有意差は認めなかった。口腔粘膜マッサージ群のVASは,訓練施行前平均値69.5±15.5,4週後53.5±18.8,8週後49.5±19.4と有意に低下がみられ(p<0.01),安静時唾液量(g/分)も訓練施行前平均値0.04±0.07g,4週後0.08±0.05g,8週後0.12±0.11gと有意な増加を示した(p<0.05)。一方,口腔外マッサージ群でのVASも,訓練施行前平均値67.0±18.2,4週後43.5±27.3,8週後42.1±28.0と有意な低下を認めた(p<0.05)。本結果から口腔乾燥症に対して,口腔粘膜マッサージも有用なアプローチとなりうる可能性が示唆された。今後,症例数を増やしさらなる効果の検証を行う予定である。
(COI開示:なし)
(北海道大学病院自主臨床研究倫理審査委員会承認番号 019-0473)