[O1-4] 舌がん患者における術前後の口腔機能評価の有効性
【緒言・目的】
口腔がん患者は術後の器質的障害により口腔機能低下および嚥下障害を発症しやすい(Baker BMら,Dysphagia,1991)。当院では①術前の口腔機能低下,嚥下障害の有無を精査する,②術後の口腔機能改善・嚥下機能回復の目標値を設定することを目的に,術前後の口腔機能・嚥下機能を精査するフローチャートを作成した。今回,試験的にフローチャートを使用した舌がん患者の口腔機能の経過を報告し,今後の課題を考察する。
【症例及び経過】
【症例 1】59歳女性。舌がん(cT2N0M0 stageⅡ)に対し右側舌部分切除と右側頸部郭清を施行された。術前は常食を摂取していたが,口腔機能低下:口腔乾燥(19.6),舌圧低下(9.2 kPa),咀嚼機能低下(57 mg/dL)を認めた。術後,嚥下障害は認めないものの,舌圧低下(7.9 kPa)と咀嚼機能低下(10 mg/dL)を認めたため,粥ゼリー,ムース食,薄とろみより食事を開始した。その後舌抵抗訓練,咀嚼訓練を中心とした口腔機能訓練を行い,術後12日には舌圧,咀嚼機能ともに改善し,常食を摂取し退院となった。
【症例 2】76歳女性。舌がん(cT3N1Mx stageⅣA)により右側舌半側切除,右側頸部郭清,気管切開を施行された。術前から,口腔機能低下:舌圧低下(7.5 kPa),咀嚼機能低下(16 mg/dL),嚥下機能低下(8点)を認め,食事は粥・刻み食を摂取していた。術後,嚥下障害:液体誤嚥を認め,口腔機能低下に口腔乾燥,舌口唇運動低下が加わったため,粥ゼリー,ムース食,中間とろみにて食事を開始した。咳嗽訓練,SSGS,舌可動域拡大訓練,舌抵抗訓練を中心とした訓練を行い,術後60日には舌圧,咀嚼機能,嚥下機能低下が改善し,軟飯,一口大を摂取し退院となった。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
今回の症例より,舌がん患者では術前から口腔機能を計測することが,術後のリハプラン立案,訓練の目標値設定に有用であることが改めて示唆された。また,舌がん患者は術前から口腔機能が低下している可能性が考えられる。術前後の合併症を予防し,術後スムーズに訓練へ移行するために,口腔機能の結果に応じた術前からの訓練介入を今後の課題と考えている。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)
口腔がん患者は術後の器質的障害により口腔機能低下および嚥下障害を発症しやすい(Baker BMら,Dysphagia,1991)。当院では①術前の口腔機能低下,嚥下障害の有無を精査する,②術後の口腔機能改善・嚥下機能回復の目標値を設定することを目的に,術前後の口腔機能・嚥下機能を精査するフローチャートを作成した。今回,試験的にフローチャートを使用した舌がん患者の口腔機能の経過を報告し,今後の課題を考察する。
【症例及び経過】
【症例 1】59歳女性。舌がん(cT2N0M0 stageⅡ)に対し右側舌部分切除と右側頸部郭清を施行された。術前は常食を摂取していたが,口腔機能低下:口腔乾燥(19.6),舌圧低下(9.2 kPa),咀嚼機能低下(57 mg/dL)を認めた。術後,嚥下障害は認めないものの,舌圧低下(7.9 kPa)と咀嚼機能低下(10 mg/dL)を認めたため,粥ゼリー,ムース食,薄とろみより食事を開始した。その後舌抵抗訓練,咀嚼訓練を中心とした口腔機能訓練を行い,術後12日には舌圧,咀嚼機能ともに改善し,常食を摂取し退院となった。
【症例 2】76歳女性。舌がん(cT3N1Mx stageⅣA)により右側舌半側切除,右側頸部郭清,気管切開を施行された。術前から,口腔機能低下:舌圧低下(7.5 kPa),咀嚼機能低下(16 mg/dL),嚥下機能低下(8点)を認め,食事は粥・刻み食を摂取していた。術後,嚥下障害:液体誤嚥を認め,口腔機能低下に口腔乾燥,舌口唇運動低下が加わったため,粥ゼリー,ムース食,中間とろみにて食事を開始した。咳嗽訓練,SSGS,舌可動域拡大訓練,舌抵抗訓練を中心とした訓練を行い,術後60日には舌圧,咀嚼機能,嚥下機能低下が改善し,軟飯,一口大を摂取し退院となった。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
今回の症例より,舌がん患者では術前から口腔機能を計測することが,術後のリハプラン立案,訓練の目標値設定に有用であることが改めて示唆された。また,舌がん患者は術前から口腔機能が低下している可能性が考えられる。術前後の合併症を予防し,術後スムーズに訓練へ移行するために,口腔機能の結果に応じた術前からの訓練介入を今後の課題と考えている。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)