一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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一般演題(口演発表)

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一般口演5
全身管理・全身疾患/症例・施設

2023年6月18日(日) 10:20 〜 11:20 第2会場 (3階 G303)

座長:
片倉 朗(東京歯科大学口腔病態外科学講座)
岩佐 康行(社会医療法人 原土井病院 歯科)

[O5-1] 血圧コントロールに苦慮した高齢患者の1例

○旭 吉直1,2、宮本 順美1,2、杉本 有加2、大道 士郎1,2 (1. 社会医療法人大道会森之宮病院歯科診療部、2. 社会医療法人大道会ボバース記念病院歯科診療部)

【緒言・目的】
高齢者の有病率は高く,何らかの基礎疾患を有していることが多い。とりわけ高血圧症,虚血性心疾患,心臓弁膜症などの循環器系疾患は多く見られる。今回私達は,抜歯を行うにあたり血圧のコントロールに苦慮した高齢者の1例を経験したので報告する。 なお,本発表にあたっては文書により患者の同意を得ている。
【症例および経過】
患者:87歳(今回初診時),女性。既往歴および現病歴:高血圧症,高脂血症,胃食道逆流症があり,当院内科でオルメサルタンメドキソミルにより血圧がコントロールされていた。前回10年前に歯科治療終了後齲蝕が進行し,歯牙の自然脱落などがあったものの歯科治療に対する恐怖感が強く,食生活に悪影響が少なかったため放置していた。ところが,約1ヶ月前から下顎右側側切歯から第二小臼歯までのブリッジ(第一小臼歯欠損)の支台歯周囲の著明な歯槽骨吸収と支台歯の齲蝕によりブリッジの動揺が激しくなり,摂食の妨げとなってきたため,当診療部を受診した。 初診時,ブリッジは支台歯ごと脱落し兼ねない状態で誤飲の恐れがあり,犬歯が齲蝕のため破折していた。普段の血圧は収縮期で140mmHg程度とのことであったが,血圧を測定したところ,219/93mmHgであった。再測定したところ,232/97mmHgに上昇していた。何ら自覚症状を訴えなかったが,直ちにニトログリセリンスプレー舌下噴霧と亜酸化窒素30%吸入で血圧を182/83mmHg に低下させ,アドレナリン含有リドカイン約1mlで局所麻酔し,数分でブリッジ除去と支台歯3歯の抜歯を行った。約1時間休憩させて収縮期血圧が170mmHg 代にまで低下してきたので,同日内科を受診するよう指示して帰宅させた。3日後の経過観察時にも血圧が204/71mmHgであったので患者にたずねたところ,内科を受診していなかったので,歯科診療後に緊急受診させた。内科ではアムロジピンが追加投与され,ニフェジピンも屯用で処方された。
【考察】
内科主治医の説明では,血圧は普段コントロール良好であるので,歯科治療による精神的緊張が原因で上昇したのではないかとのことであった。このような高齢者は定期的な歯科受診による恐怖感の軽減と血圧コントロールの確認が必要と考えられた。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)