The 34th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

一般演題(口演発表)

一般演題(口演発表) » [一般口演5] 全身管理・全身疾患/症例・施設

一般口演5
全身管理・全身疾患/症例・施設

Sun. Jun 18, 2023 10:20 AM - 11:20 AM 第2会場 (3階 G303)

座長:
片倉 朗(東京歯科大学口腔病態外科学講座)
岩佐 康行(社会医療法人 原土井病院 歯科)

[O5-3] 重症認知症高齢者の上顎歯肉に医原性リンパ増殖性疾患を発見した一例

○大沢 啓1、森 美由紀1、清水 梓1、齊藤 美香1、大鶴 洋1,2、平野 浩彦1 (1. 東京都健康長寿医療センター、2. 東京都)

【緒言・目的】
 認知症高齢者の悪性リンパ腫では,緩和的な治療が中心になることが多い。今回,重症認知症高齢者でその他の医原性リンパ増殖性疾患(OIIA-LPD)を歯科にて発見し,化学療法へつなげることができた一例を経験したので,報告する。
【症例および経過】
 症例:79歳女性。主訴:左側上顎口蓋側歯肉部の腫脹。既往歴:関節リウマチ,重症アルツハイマー型認知症。現病歴:1ヵ月前より紹介医で左側上顎口蓋側歯肉部の腫脹を指摘され,X月Y日(第1病日)当科受診した。現症:左側上顎前歯部から臼歯部に潰瘍を有する歯肉の腫脹を認めた。生検の病理組織検査はEBV-陽性diffuse large B-cell lymphomaであった。臨床診断:OIIA-LPD。経過:第1病日,当院血液内科へ紹介した。MTX投与中のため,リウマチ科医と協議しMTXを中止した。また,口腔清掃の自立度が低く,当科と訪問歯科診療で連携し口腔衛生管理を実施した。第26病日,上顎歯肉口蓋腫瘍の顕著な縮小を認めたが,第87病日,腫瘍の再増殖を発見し,当院化学療法科と情報共有し経過観察となった。第106病日,腫瘍増大等により食事摂取困難となり化学療法科に緊急入院した。認知症による自制困難で腫瘍部を頻回に触ってしまうため,持続的な出血も認め,以上の状況から,家族とも協議し第111病日よりR-CHOP(化学療法)を開始した。第133病日,化学療法1コース終了時には腫瘍は消失した。経口摂取も少量ではあるが可能となり,口腔内を触る行為も無くなり,認知症の行動・心理症状も改善したため,第156病日に転院となった。第161病日,転院先で死亡した。なお,本症例の発表について患者家族より文書による同意を得ている。
【考察】
 本症例は,歯肉腫脹の精査を契機にOIIA-LPDの診断に至った。継続的な口腔衛生管理中に再増殖を早期確認し,血液内科,家族等と協議し化学療法を選択し,経口摂取を再開し得た。認知症高齢者は自身の病状などの変化を適切に訴える事が困難な場合が多く,口腔管理介入による継続的な病状把握が治療方針検討に資する情報となり,療養上のQOL向上に貢献しうると考える。
 (COI開示:なし) (倫理審査対象外)