The 34th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

一般演題(口演発表)

一般演題(口演発表) » [一般口演5] 全身管理・全身疾患/症例・施設

一般口演5
全身管理・全身疾患/症例・施設

Sun. Jun 18, 2023 10:20 AM - 11:20 AM 第2会場 (3階 G303)

座長:
片倉 朗(東京歯科大学口腔病態外科学講座)
岩佐 康行(社会医療法人 原土井病院 歯科)

[O5-4] 気管切開を伴う歯肉癌手術後の摂食嚥下介入時にCOVID-19感染症陽性となった一例

○北條 健太郎1、鈴木 海路1、渡邉 聡1、渡部 議之1、鈴木 史彦1 (1. 奥羽大学歯学部附属病院 地域医療支援歯科)

【目 的】
口腔癌手術後の患者管理では、手術の侵襲や患者の呼吸器機能を考慮して、気管切開が選択されることがある。気管切開は気道管理の観点からは優れているが、摂食嚥下の観点からは不利な点がある。またCOVID-19感染による摂食嚥下障害の報告もみられる。今回、気管切開を伴う歯肉癌手術後の摂食嚥下介入時にCOVID-19感染症陽性となった症例について報告する。
【症例および結果】
患者は72歳男性。左側下顎臼歯部の扁平上皮癌(T4a N2b M0 stageⅣA)のため、当院口腔外科で腫瘍切除術(下顎骨区域切除術)、左側全頸部郭清術、プレート再建、気管切開を行った。患者は喫煙者であることと、術前の呼吸機能検査ではFEV1.0%が70.40%であったために、気管切開を行うこととなった。術前の嚥下スクリーニング検査では全て正常であった。術後は経鼻経管栄養から開始し、術後6日目に経口流動食に、術後7日目にミキサー食に移行した。さらに術後9日目に主食が五分粥、副食が刻み食に移行した。術後13日目に38度代の発熱を認め、術後14日目に本院でPCR検査を実施したところ、COVID-19感染症陽性となったため、術後15日目にCOVID-19感染症対応病院へ転院となった。術後26日目に当院へ再入院となり、食形態の低下がない事を確認した。術後27日目に気管切開閉鎖術を実施し、食形態を全粥にした。術後29日目に退院に向け嚥下内視鏡検査を実施し、主食、副食共に常食とした。術後34日目に退院となった。  
【考察】
本症例は頸部郭清術と気管切開を実施し、COVID-19感染症陽性となったが、摂食嚥下機能の回復は良好であった。その一因として患者は72歳であるものの高血圧症以外の全身的な基礎疾患はなかったことや、生活が自立していたことが考えられる。COVID-19感染症陽性となった理由として、病棟スタッフからの感染が疑われた。しかしながら、早期のPCR検査とCOVID-19感染症対応病院への転院を実施できたことで摂食嚥下機能の低下を防げたものと考える。(COI開示:なし)(奥羽大学倫理審査委員会承認番号:第329号)