[O5-6] 超高齢口腔癌患者の治療経験
【緒言・目的】
近年,寿命の延伸に伴い,口腔癌が増加傾向である。施設入所中の高齢者も増加しており,訪問歯科医が口腔癌を発見する例もある。今回我々は,施設入所中,口腔出血を契機に口腔癌が発覚した超高齢者に対する治療を経験したので,その概要を報告する。
【症例および経過】
患者;92歳,女性。現病歴;20XX年Y-1月下旬,朝の口腔ケア後に含嗽した際,口腔出血を認めた。翌日,訪問歯科医が診察,左側上顎第1,第2小臼歯が高度に動揺し,周囲歯肉に広範囲な易出血性の潰瘍を認めた。左側上顎歯肉癌の疑いで当科を紹介され,Y月に受診した。既往歴;絞扼性イレウス術後,狭心症,高血圧,脊柱管狭窄症術後,不整脈,両側白内障。初診時現症;全身所見:身長130.2cm、体重39.7Kg。車椅子移動、亀背、意識清明、意思疎通可能であった。口腔内所見:左側上顎第1,第2小臼歯口蓋歯肉に,発赤を伴う広範な腫瘍性病変を認めた。頬側歯頚部には粗造な白色変化を認めた。パノラマX線所見:左側上顎第1,第2小臼歯周囲歯槽骨は高度に吸収していた。左側上顎第1,第2大臼歯は挺出していた。内服薬:シロスタゾール,ニコランジル,フロセミド,ランソプラゾール,大建中湯。治療経過;初診時に細胞診を実施,扁平上皮癌が疑われた。6日後に生検を実施,扁平上皮癌(T2N0MX)と診断された。患者および患者家族は,手術などの治療を希望しなかった。しかし,無治療の場合,癌の増大に伴う,疼痛および出血が生じる懸念があった。患者および患者家族の同意を得て,初診から40日~64日まで,放射線治療(Liniac:Total48Gy)を行った。治療により左側上顎歯肉癌は肉眼的に消失し,初診から1年5か月後時点において再発は見られていない。
【考察】
超高齢口腔癌患者の場合,癌の治療効果より治療に伴う負担の方が大きい場合や,癌以外の病変や寿命による死亡なども考えられる。一方,未治療の場合,癌の進行に伴い,出血,疼痛,臭気や増大に伴う窒息などが懸念される。本症例は,放射線治療で局所制御が可能であった。このように,患者個々の病状を把握し,患者の家族の協力度や周囲環境の整備なども鑑み,適宜対応することが望まれる。なお,今回の症例発表に際しては,患者家族の同意を得ている。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)
近年,寿命の延伸に伴い,口腔癌が増加傾向である。施設入所中の高齢者も増加しており,訪問歯科医が口腔癌を発見する例もある。今回我々は,施設入所中,口腔出血を契機に口腔癌が発覚した超高齢者に対する治療を経験したので,その概要を報告する。
【症例および経過】
患者;92歳,女性。現病歴;20XX年Y-1月下旬,朝の口腔ケア後に含嗽した際,口腔出血を認めた。翌日,訪問歯科医が診察,左側上顎第1,第2小臼歯が高度に動揺し,周囲歯肉に広範囲な易出血性の潰瘍を認めた。左側上顎歯肉癌の疑いで当科を紹介され,Y月に受診した。既往歴;絞扼性イレウス術後,狭心症,高血圧,脊柱管狭窄症術後,不整脈,両側白内障。初診時現症;全身所見:身長130.2cm、体重39.7Kg。車椅子移動、亀背、意識清明、意思疎通可能であった。口腔内所見:左側上顎第1,第2小臼歯口蓋歯肉に,発赤を伴う広範な腫瘍性病変を認めた。頬側歯頚部には粗造な白色変化を認めた。パノラマX線所見:左側上顎第1,第2小臼歯周囲歯槽骨は高度に吸収していた。左側上顎第1,第2大臼歯は挺出していた。内服薬:シロスタゾール,ニコランジル,フロセミド,ランソプラゾール,大建中湯。治療経過;初診時に細胞診を実施,扁平上皮癌が疑われた。6日後に生検を実施,扁平上皮癌(T2N0MX)と診断された。患者および患者家族は,手術などの治療を希望しなかった。しかし,無治療の場合,癌の増大に伴う,疼痛および出血が生じる懸念があった。患者および患者家族の同意を得て,初診から40日~64日まで,放射線治療(Liniac:Total48Gy)を行った。治療により左側上顎歯肉癌は肉眼的に消失し,初診から1年5か月後時点において再発は見られていない。
【考察】
超高齢口腔癌患者の場合,癌の治療効果より治療に伴う負担の方が大きい場合や,癌以外の病変や寿命による死亡なども考えられる。一方,未治療の場合,癌の進行に伴い,出血,疼痛,臭気や増大に伴う窒息などが懸念される。本症例は,放射線治療で局所制御が可能であった。このように,患者個々の病状を把握し,患者の家族の協力度や周囲環境の整備なども鑑み,適宜対応することが望まれる。なお,今回の症例発表に際しては,患者家族の同意を得ている。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)