[P13] 下顎の多数歯ブリッジを脱離した要介護認知症患者に対し,歯科訪問診療にて下顎義歯修理を選択した症例
【緒言・目的】
令和3年版高齢社会白書によると,65歳以上の要介護認定者はおよそ460万人,そのうち介護が必要になった主な原因について見ると,認知症が18.1%と最も多い。また,要介護認定者は日常生活に制約を受けることが多く,歯科治療の必要性が健常者より高くなる。今回,下顎の多数歯ブリッジを脱離した要介護認知症患者に対し,歯科訪問診療にて下顎義歯を増歯修理することを選択し,良好な経過を得た1例を経験したので報告する。
【症例および経過】
初診時89歳の女性。要介護1でサービス付き高齢者住宅に入居中。アルツハイマー型認知症,高血圧症,糖尿病,気管支喘息の既往あり(いずれも発症時期不明)。2022年3月,担当ケアマネジャーより,下顎の補綴物が外れまま下顎義歯を装着して食事しており,咬みにくいため診察して欲しいと依頼され,本人やご家族,ケアマネジャーに口腔内状況を説明し了承を得た後,治療を開始した。初診時の下顎の口腔内所見として, ⑤④③21┬12③④ブリッジ脱離, 543┬34残根で┌34は動揺度3であったが,76┬567部分床義歯を装着し食事を摂取していた。また,食形態は常食から全粥と軟菜に変更していた。 今回,本人より短期間で治療して欲しいと強く望まれたため,┌34を局所麻酔下にて抜歯し,下顎義歯を増歯修理する事とした。同年4月,┌34を抜歯する際,既製金属トレーを用いて下顎義歯を取り込んで義歯修理の印象採得を行おうとトレーを試適したが,十分な開口維持が出来なかったため,下顎義歯のブリッジ脱離部に印象材を直接盛り付けて行った。抜歯1週間後,下顎修理義歯の装着・調整を行った。抜歯3週間後,下顎義歯は使用良好となったため,2022年5月以降,歯科衛生士による毎週の口腔衛生管理と歯科医師による隔週の残存部・義歯のチェックを行いながら口腔内環境を維持している。 なお,本報告の発表について患者本人及び家族より文書による同意を得ている。
【考察】
義歯修理や調整を通して,補綴物が外れる前と同じ食形態にて摂取可能となった。また,本症例を通して,地域歯科医院による歯科訪問診療において,多数歯ブリッジを脱離した要介護認知症患者に対し義歯修理を選択することで短期間で口腔内環境を改善することができた。 (COI開示:なし) (倫理審査対象外)
令和3年版高齢社会白書によると,65歳以上の要介護認定者はおよそ460万人,そのうち介護が必要になった主な原因について見ると,認知症が18.1%と最も多い。また,要介護認定者は日常生活に制約を受けることが多く,歯科治療の必要性が健常者より高くなる。今回,下顎の多数歯ブリッジを脱離した要介護認知症患者に対し,歯科訪問診療にて下顎義歯を増歯修理することを選択し,良好な経過を得た1例を経験したので報告する。
【症例および経過】
初診時89歳の女性。要介護1でサービス付き高齢者住宅に入居中。アルツハイマー型認知症,高血圧症,糖尿病,気管支喘息の既往あり(いずれも発症時期不明)。2022年3月,担当ケアマネジャーより,下顎の補綴物が外れまま下顎義歯を装着して食事しており,咬みにくいため診察して欲しいと依頼され,本人やご家族,ケアマネジャーに口腔内状況を説明し了承を得た後,治療を開始した。初診時の下顎の口腔内所見として, ⑤④③21┬12③④ブリッジ脱離, 543┬34残根で┌34は動揺度3であったが,76┬567部分床義歯を装着し食事を摂取していた。また,食形態は常食から全粥と軟菜に変更していた。 今回,本人より短期間で治療して欲しいと強く望まれたため,┌34を局所麻酔下にて抜歯し,下顎義歯を増歯修理する事とした。同年4月,┌34を抜歯する際,既製金属トレーを用いて下顎義歯を取り込んで義歯修理の印象採得を行おうとトレーを試適したが,十分な開口維持が出来なかったため,下顎義歯のブリッジ脱離部に印象材を直接盛り付けて行った。抜歯1週間後,下顎修理義歯の装着・調整を行った。抜歯3週間後,下顎義歯は使用良好となったため,2022年5月以降,歯科衛生士による毎週の口腔衛生管理と歯科医師による隔週の残存部・義歯のチェックを行いながら口腔内環境を維持している。 なお,本報告の発表について患者本人及び家族より文書による同意を得ている。
【考察】
義歯修理や調整を通して,補綴物が外れる前と同じ食形態にて摂取可能となった。また,本症例を通して,地域歯科医院による歯科訪問診療において,多数歯ブリッジを脱離した要介護認知症患者に対し義歯修理を選択することで短期間で口腔内環境を改善することができた。 (COI開示:なし) (倫理審査対象外)