[P22] 高齢者機能評価を行いBest supportive careを選択した高齢口腔癌患者の2例
【緒言・目的】
高齢化に伴い高齢口腔癌患者が増加し,治療方針決定には様々な問題を考慮した治療選択が必要とされ,治療方針決定に苦慮することも多い。近年,治療方針決定に高齢者機能評価を行うことが推奨される。今回,高齢者機能評価を行いBest supportive care(以下BSC)を選択し,多職種連携により対応した症例を経験したので概要を報告する。
【症例および経過】
【症例1】75歳の男性。主訴:左顎の腫れ。既往歴:アルツハイマー型認知症,アルコール依存症,高血圧症。PS:1,要介護3。家庭環境:妻とは死別し在宅独居,息子とは絶縁状態で成年後見人による支援と訪問看護を受けている。現病歴:201X年右側舌扁平上皮癌(T2N0M0,stage II)にて舌部分切除術施行。その後通院困難により202X年6月を最後に通院中断。202X年9月頃より左側顎下部の腫脹を認め,近医内科より202X年10月当科紹介来院となる。現症:左側顎下部に下顎骨固定性で皮膚と癒着を伴う弾性硬腫瘤を認め,口腔内に腫瘍は認めなかった。臨床診断:右側舌癌術後,両側頸部リンパ節後発転移。PET-CTと耳鼻咽喉科での内視鏡検査にて右側下咽頭癌を認めた。高齢者機能評価G8:12点。経過:認知症による病状理解困難であり,下咽頭癌合併等から,本人,関連多職種と相談しBSCの方針とした。現在腫瘍は増大傾向だが,QOLは保たれ在宅療養を継続している。
【症例2】94歳の女性。主訴:口の中のできもの。既往歴:アルツハイマー型認知症,大動脈弁狭窄症,ラクナ梗塞,高血圧症。PS:3,要介護3。家庭環境:息子は県外在住,特別養護老人ホーム入居中。現病歴:202X年11月左側頬部の腫脹を施設職員が発見し,近在耳鼻咽喉科受診。左側上顎歯肉に潰瘍を認め,歯科受診を経て当科紹介来院となった。現症:左側上顎歯肉の広範な潰瘍を伴う腫瘍性病変,左側頬部皮膚の腫脹と瘻孔を認めた。臨床診断:左側上顎歯肉癌(T4aN0Mx)。高齢機能評価G8:6.8点。経過:認知症による病状理解困難等から,入居施設職員と息子(遠方のため電話)と相談しBSCの方針とし緩和ケア施設へ入所予定とした。現在腫瘍は増大傾向だが,QOLは保たれ入居施設で訪問診療を受けている。なお,本報告の発表について患者本人と代諾者から文書による同意を得ている。
【考察】
高齢癌患者の治療方針決定に高齢者機能評価は有効であるものの,様々な要因が治療方針に影響する。BSCを選択した際にはとくに,本人を含めた多職種による対応が重要であると思われた。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)
高齢化に伴い高齢口腔癌患者が増加し,治療方針決定には様々な問題を考慮した治療選択が必要とされ,治療方針決定に苦慮することも多い。近年,治療方針決定に高齢者機能評価を行うことが推奨される。今回,高齢者機能評価を行いBest supportive care(以下BSC)を選択し,多職種連携により対応した症例を経験したので概要を報告する。
【症例および経過】
【症例1】75歳の男性。主訴:左顎の腫れ。既往歴:アルツハイマー型認知症,アルコール依存症,高血圧症。PS:1,要介護3。家庭環境:妻とは死別し在宅独居,息子とは絶縁状態で成年後見人による支援と訪問看護を受けている。現病歴:201X年右側舌扁平上皮癌(T2N0M0,stage II)にて舌部分切除術施行。その後通院困難により202X年6月を最後に通院中断。202X年9月頃より左側顎下部の腫脹を認め,近医内科より202X年10月当科紹介来院となる。現症:左側顎下部に下顎骨固定性で皮膚と癒着を伴う弾性硬腫瘤を認め,口腔内に腫瘍は認めなかった。臨床診断:右側舌癌術後,両側頸部リンパ節後発転移。PET-CTと耳鼻咽喉科での内視鏡検査にて右側下咽頭癌を認めた。高齢者機能評価G8:12点。経過:認知症による病状理解困難であり,下咽頭癌合併等から,本人,関連多職種と相談しBSCの方針とした。現在腫瘍は増大傾向だが,QOLは保たれ在宅療養を継続している。
【症例2】94歳の女性。主訴:口の中のできもの。既往歴:アルツハイマー型認知症,大動脈弁狭窄症,ラクナ梗塞,高血圧症。PS:3,要介護3。家庭環境:息子は県外在住,特別養護老人ホーム入居中。現病歴:202X年11月左側頬部の腫脹を施設職員が発見し,近在耳鼻咽喉科受診。左側上顎歯肉に潰瘍を認め,歯科受診を経て当科紹介来院となった。現症:左側上顎歯肉の広範な潰瘍を伴う腫瘍性病変,左側頬部皮膚の腫脹と瘻孔を認めた。臨床診断:左側上顎歯肉癌(T4aN0Mx)。高齢機能評価G8:6.8点。経過:認知症による病状理解困難等から,入居施設職員と息子(遠方のため電話)と相談しBSCの方針とし緩和ケア施設へ入所予定とした。現在腫瘍は増大傾向だが,QOLは保たれ入居施設で訪問診療を受けている。なお,本報告の発表について患者本人と代諾者から文書による同意を得ている。
【考察】
高齢癌患者の治療方針決定に高齢者機能評価は有効であるものの,様々な要因が治療方針に影響する。BSCを選択した際にはとくに,本人を含めた多職種による対応が重要であると思われた。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)