[P29] 訪問歯科診療おいて光学印象を活用したマウスガード作製により自己下唇咬傷が改善した症例
【緒言・目的】
訪問歯科診療における口腔軟組織損傷等のトラブルは時折散見される。その多くが意識障害患者であり,対応に苦慮する。今回,意識障害高齢者の自己下唇咬傷による出血ならびに下唇実質欠損に対して,光学印象を活用したマウスガードを装着した結果,自己下唇咬傷が改善した1例を経験したので報告する。
【症例および経過】
92歳,女性。脳皮質下出血,心房細動,鬱,脳血管性認知症,高血圧症,腰椎圧迫骨折の既往あり。令和4年2月頃より,下唇咬傷と出血を繰り返すようになった。その後も出血と実質欠損,潰瘍が改善しないと5月に施設関係者から訪問歯科診療の依頼があった。訪問歯科診療開始時は,要介護度5,傾眠状態を呈し,Peformance Status 4,JCS 30であった。口腔内所見では,過蓋咬合,下唇を巻き込み出血,潰瘍,一部実質欠損を認めた。 下唇咬傷への治療方針は,原因除去のため抜歯であるが,原因歯の抜去後も他部位の軟組織損傷リスクと合併症を抱える超高齢者等の留意点から,外科処置を回避し,間接的な対応として下唇の巻き込み防止としてのマウスガード装着とした。通法の印象採得や咬合採得は開口制限や材料の流れ込みによる窒息リスクがあるため,リスクの低い光学印象を活用してマウスガードを作製した。マウスガードの装着に問題なく,調整を行い,自己下唇咬傷が改善した。なお,本発表について患者家族から文書による同意を得ている。
【考察】
訪問歯科診療での軟組織損傷事例は少なくない。その多くが意思疎通困難,咬合崩壊など歯科治療が困難な状況が多い。本症例は,開口障害と過蓋咬合を呈しており,通法による咬合面被覆とセルフケアによる施設関係者の管理が共に困難と推測された。そのため,開口障害や過蓋咬合を呈している状態でも前方からの装着が可能となるように,歯間部のアンダーカットに維持を求めた。初期のマウスガード作製から改変を繰り返し,装着から20日前後で下唇の咬傷,出血等の改善を認めた。また,意思疎通困難者のマウスガード作製に対し,光学印象の活用は誤飲や窒息等の医療事故防止の観点から有効な方法と考えられた。 (COI開示:なし)(倫理審査対象外)
訪問歯科診療における口腔軟組織損傷等のトラブルは時折散見される。その多くが意識障害患者であり,対応に苦慮する。今回,意識障害高齢者の自己下唇咬傷による出血ならびに下唇実質欠損に対して,光学印象を活用したマウスガードを装着した結果,自己下唇咬傷が改善した1例を経験したので報告する。
【症例および経過】
92歳,女性。脳皮質下出血,心房細動,鬱,脳血管性認知症,高血圧症,腰椎圧迫骨折の既往あり。令和4年2月頃より,下唇咬傷と出血を繰り返すようになった。その後も出血と実質欠損,潰瘍が改善しないと5月に施設関係者から訪問歯科診療の依頼があった。訪問歯科診療開始時は,要介護度5,傾眠状態を呈し,Peformance Status 4,JCS 30であった。口腔内所見では,過蓋咬合,下唇を巻き込み出血,潰瘍,一部実質欠損を認めた。 下唇咬傷への治療方針は,原因除去のため抜歯であるが,原因歯の抜去後も他部位の軟組織損傷リスクと合併症を抱える超高齢者等の留意点から,外科処置を回避し,間接的な対応として下唇の巻き込み防止としてのマウスガード装着とした。通法の印象採得や咬合採得は開口制限や材料の流れ込みによる窒息リスクがあるため,リスクの低い光学印象を活用してマウスガードを作製した。マウスガードの装着に問題なく,調整を行い,自己下唇咬傷が改善した。なお,本発表について患者家族から文書による同意を得ている。
【考察】
訪問歯科診療での軟組織損傷事例は少なくない。その多くが意思疎通困難,咬合崩壊など歯科治療が困難な状況が多い。本症例は,開口障害と過蓋咬合を呈しており,通法による咬合面被覆とセルフケアによる施設関係者の管理が共に困難と推測された。そのため,開口障害や過蓋咬合を呈している状態でも前方からの装着が可能となるように,歯間部のアンダーカットに維持を求めた。初期のマウスガード作製から改変を繰り返し,装着から20日前後で下唇の咬傷,出血等の改善を認めた。また,意思疎通困難者のマウスガード作製に対し,光学印象の活用は誤飲や窒息等の医療事故防止の観点から有効な方法と考えられた。 (COI開示:なし)(倫理審査対象外)