[P34] 口腔乾燥症の臨床統計および自覚症状改善に関する因子探索
【目的】
口腔乾燥症の原因は多岐にわたる。患者特性や診断に関する報告は散見されるが,原因別転帰に関する検討は少ない。転帰および自覚症状改善に関わる因子が明らかになれば,予後を推測できる可能性がある。したがって,口腔乾燥症患者の臨床統計および自覚症状の改善に関する因子探索を行った。
【方法】
新潟大学医歯学総合病院くちのかわき外来を2011年1月から2020年12月までに受診した65歳以上の口腔乾燥症患者のうち,「2022年口腔乾燥症の新分類」を用いて診断した367名を対象とした。年齢,罹病期間,服用薬剤数,舌痛症や味覚障害の有無,精神健康度,安静時唾液分泌量,刺激唾液分泌量,診断について記述統計を行った後,2年後の口腔乾燥感の改善に関する因子についてロジスティック回帰分析を行った。
【結果と考察】
対象者の平均年齢は74.0±6.0歳,平均罹病期間は36.1±63.9か月であった。口腔乾燥の原因は,唾液腺機能障害性口腔乾燥症(唾液分泌量の減少があるもの)が315名(85.8%)で,細分類で最も多かったのは,唾液分泌刺激障害(薬剤やストレスなど)300名(81.7%)であった。原因が複数ある者は246名(67.1%)であった。2年後の治療転帰は,終了者191名(52.0%),継続者111名(30.2%),中断者60名(16.3%)となっていた。自覚症状改善は,210名(75.5%)に認められた。原因が1つである者のみを対象として改善率を求めたところ,唾液腺実質障害(シェーグレン症候群や頭頸部放射線療法など)の改善率は66.7%と最も低かった。これは,唾液腺の器質的変化が重度で,改善が困難であったためと考えられる。一方,原因が唾液分泌刺激障害のみである者の改善率は79.8%,非唾液腺機能障害性口腔乾燥症のうち心因性のみの者は70.0%であった。
唾液腺機能障害性口腔乾燥症患者を対象としたロジスティック回帰分析の結果,自覚症状改善に関する有意な独立変数となったのは,味覚障害の有無と罹病期間であった。細分類による原因別の自覚症状改善に関する因子探索は,1群あたりの対象者数が少ないため行うことができなかった。今後,多施設共同研究などを行い,口腔乾燥症の原因別の改善因子を探索し,治療に還元することが求められる。
(COI 開示:なし)
(新潟大学倫理審査委員会承認番号 2022-0139)
口腔乾燥症の原因は多岐にわたる。患者特性や診断に関する報告は散見されるが,原因別転帰に関する検討は少ない。転帰および自覚症状改善に関わる因子が明らかになれば,予後を推測できる可能性がある。したがって,口腔乾燥症患者の臨床統計および自覚症状の改善に関する因子探索を行った。
【方法】
新潟大学医歯学総合病院くちのかわき外来を2011年1月から2020年12月までに受診した65歳以上の口腔乾燥症患者のうち,「2022年口腔乾燥症の新分類」を用いて診断した367名を対象とした。年齢,罹病期間,服用薬剤数,舌痛症や味覚障害の有無,精神健康度,安静時唾液分泌量,刺激唾液分泌量,診断について記述統計を行った後,2年後の口腔乾燥感の改善に関する因子についてロジスティック回帰分析を行った。
【結果と考察】
対象者の平均年齢は74.0±6.0歳,平均罹病期間は36.1±63.9か月であった。口腔乾燥の原因は,唾液腺機能障害性口腔乾燥症(唾液分泌量の減少があるもの)が315名(85.8%)で,細分類で最も多かったのは,唾液分泌刺激障害(薬剤やストレスなど)300名(81.7%)であった。原因が複数ある者は246名(67.1%)であった。2年後の治療転帰は,終了者191名(52.0%),継続者111名(30.2%),中断者60名(16.3%)となっていた。自覚症状改善は,210名(75.5%)に認められた。原因が1つである者のみを対象として改善率を求めたところ,唾液腺実質障害(シェーグレン症候群や頭頸部放射線療法など)の改善率は66.7%と最も低かった。これは,唾液腺の器質的変化が重度で,改善が困難であったためと考えられる。一方,原因が唾液分泌刺激障害のみである者の改善率は79.8%,非唾液腺機能障害性口腔乾燥症のうち心因性のみの者は70.0%であった。
唾液腺機能障害性口腔乾燥症患者を対象としたロジスティック回帰分析の結果,自覚症状改善に関する有意な独立変数となったのは,味覚障害の有無と罹病期間であった。細分類による原因別の自覚症状改善に関する因子探索は,1群あたりの対象者数が少ないため行うことができなかった。今後,多施設共同研究などを行い,口腔乾燥症の原因別の改善因子を探索し,治療に還元することが求められる。
(COI 開示:なし)
(新潟大学倫理審査委員会承認番号 2022-0139)