[P47] コロナ禍により口腔内環境が悪化した患者に対し,歯科訪問診療を継続的に行い環境改善を認めた症例
【緒言・目的】
COVID–19の流行は,直接罹患していない高齢者においても活動の減少等の影響を与えた。今回,歯科訪問診療を行なっていた施設がコロナ禍により施設閉鎖・訪問中止となり,口腔内機能の低下・口腔内環境が悪化した症例を経験した。施設閉鎖期間が対象患者に与えた影響と,歯科衛生士が中心となり口腔内環境の改善・意欲向上のために取り組んでいる症例について報告する。
【症例および概要】
患者は82歳男性,既往歴は糖尿病,高血圧,陳旧性心筋梗塞。2017年8月脳梗塞を発症。右不全麻痺が残存しリハビリを行なっていたが,日常生活動作が低下し高齢者住宅へ入所。「義歯が当たって痛い」との主訴で2018年3月歯科訪問診療を受診。義歯管理や口腔清掃は自立していたが,義歯には多量の食物残渣が付着し,疼痛の原因は清掃不良であった。歯科医師による義歯調整,歯科衛生士による定期的な口腔機能管理と患者本人への口腔清掃指導を実施。徐々に患者の意欲が向上し,口腔衛生状態も改善していった。2022年1月コロナ禍による施設閉鎖,デイサービスも利用停止となった。2022年4月歯科訪問診療・デイサービスの利用再開。施設閉鎖期間に自立歩行から車椅子になった。また自立していた口腔清掃が行えなくなるなど施設閉鎖前に比べ身体機能の低下・口腔内環境の悪化が顕著であった。初診時同様に口腔内は食物残渣とプラークが多量に付着し,粘膜の発赤もみられた。患者本人による口腔清掃が困難となり歯科訪問診療を隔週から毎週へ増やした。同時に施設スタッフへ口腔清掃を依頼,口腔機能管理を行なった。徐々に口腔内環境に改善を認め,自身での口腔清掃も可能となった。現在,患者の口腔清掃に対する意欲は徐々に増しており,患者に寄り添いながら機能回復へ向けて定期的な口腔機能管理を継続している。
なお,本報告の発表について患者本人,家族から文章による同意を得ている。
【考察】
コロナ禍による施設閉鎖は患者本人の身体機能・口腔内環境に大きな変化を与えた。患者本人や施設スタッフへの口腔清掃指導や毎週口腔機能管理を行うことが,口腔内環境の改善・患者の意欲向上に寄与したと考えられる。今後も口腔内環境の維持・機能回復に向けて施設や家族と連携を取り歯科訪問診療を継続することが重要であると考える。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)
COVID–19の流行は,直接罹患していない高齢者においても活動の減少等の影響を与えた。今回,歯科訪問診療を行なっていた施設がコロナ禍により施設閉鎖・訪問中止となり,口腔内機能の低下・口腔内環境が悪化した症例を経験した。施設閉鎖期間が対象患者に与えた影響と,歯科衛生士が中心となり口腔内環境の改善・意欲向上のために取り組んでいる症例について報告する。
【症例および概要】
患者は82歳男性,既往歴は糖尿病,高血圧,陳旧性心筋梗塞。2017年8月脳梗塞を発症。右不全麻痺が残存しリハビリを行なっていたが,日常生活動作が低下し高齢者住宅へ入所。「義歯が当たって痛い」との主訴で2018年3月歯科訪問診療を受診。義歯管理や口腔清掃は自立していたが,義歯には多量の食物残渣が付着し,疼痛の原因は清掃不良であった。歯科医師による義歯調整,歯科衛生士による定期的な口腔機能管理と患者本人への口腔清掃指導を実施。徐々に患者の意欲が向上し,口腔衛生状態も改善していった。2022年1月コロナ禍による施設閉鎖,デイサービスも利用停止となった。2022年4月歯科訪問診療・デイサービスの利用再開。施設閉鎖期間に自立歩行から車椅子になった。また自立していた口腔清掃が行えなくなるなど施設閉鎖前に比べ身体機能の低下・口腔内環境の悪化が顕著であった。初診時同様に口腔内は食物残渣とプラークが多量に付着し,粘膜の発赤もみられた。患者本人による口腔清掃が困難となり歯科訪問診療を隔週から毎週へ増やした。同時に施設スタッフへ口腔清掃を依頼,口腔機能管理を行なった。徐々に口腔内環境に改善を認め,自身での口腔清掃も可能となった。現在,患者の口腔清掃に対する意欲は徐々に増しており,患者に寄り添いながら機能回復へ向けて定期的な口腔機能管理を継続している。
なお,本報告の発表について患者本人,家族から文章による同意を得ている。
【考察】
コロナ禍による施設閉鎖は患者本人の身体機能・口腔内環境に大きな変化を与えた。患者本人や施設スタッフへの口腔清掃指導や毎週口腔機能管理を行うことが,口腔内環境の改善・患者の意欲向上に寄与したと考えられる。今後も口腔内環境の維持・機能回復に向けて施設や家族と連携を取り歯科訪問診療を継続することが重要であると考える。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)