[P59] 地域在住自立高齢者における口腔機能および咀嚼行動と歩行能力との関連
【目的】
歩行困難は,高齢者が要介護となる原因のひとつである。口腔機能と歩行機能を含む全身の身体機能との関連が調査され,全身と口腔の筋力低下や咬合と体幹のバランスの関連が報告されているが,日常生活におけるパターン運動の代表である咀嚼と歩行との関連を検討した報告は少ない。そこで,本検討では地域在住高齢者を対象に咀嚼行動と歩行能力との関係を調べた。
【方法】
対象者は2019年11月から2022年11月に開催された大阪府M市自治会主催の健康講座に参加した65歳以上の地域在住自立高齢者100名(男性31名,女性69名,平均年齢75.7±6.3歳)である。調査内容は,年齢,性別,舌圧,オーラルディアドコキネシス,咀嚼能率,咬合力,おにぎり(100g)摂取時咀嚼行動(咀嚼回数,咀嚼テンポ,一口当たり咀嚼回数,摂取時間)および歩行能力とした。咀嚼行動はシャープ社製bitescanを用いて測定し,歩行能力はタイムアップアンドゴーテスト(TUG)により評価した。各項目の関連性を,Spearmanの相関係数(P<0.05)を算出して検討した。
【結果と考察】
TUGと舌圧(rs=-0.33),オーラルディアドコキネシス/ta/(rs=-0.21),/ka/(rs=-0.28)の3項目との間には弱い負の相関が認められ,歩行能力が低いと舌圧や舌の巧緻性が低いことが示唆された。また,TUGと咀嚼テンポ(rs=-0.22)との間に弱い負の相関,摂取時間(rs=0.33)との間には弱い正の相関が認められ,歩行能力が低いと咀嚼スピードが遅く時間がかかることが示唆された。今回の結果より,全身の筋力低下による歩行能力の低下は,舌の筋力低下とも関連していると考えられた。また,歩行スピードの低下は,オーラルディアドコキネシスといった舌の繰り返し運動や咀嚼運動のスピード低下と関連していた。以上の結果より,地域在住高齢者において,咀嚼スピードや舌の巧緻性の低下は,歩行能力の低下と関連していることが示唆された。(COI開示:なし)(新潟大学倫理審査委員会、承認番号:2017-0230)
歩行困難は,高齢者が要介護となる原因のひとつである。口腔機能と歩行機能を含む全身の身体機能との関連が調査され,全身と口腔の筋力低下や咬合と体幹のバランスの関連が報告されているが,日常生活におけるパターン運動の代表である咀嚼と歩行との関連を検討した報告は少ない。そこで,本検討では地域在住高齢者を対象に咀嚼行動と歩行能力との関係を調べた。
【方法】
対象者は2019年11月から2022年11月に開催された大阪府M市自治会主催の健康講座に参加した65歳以上の地域在住自立高齢者100名(男性31名,女性69名,平均年齢75.7±6.3歳)である。調査内容は,年齢,性別,舌圧,オーラルディアドコキネシス,咀嚼能率,咬合力,おにぎり(100g)摂取時咀嚼行動(咀嚼回数,咀嚼テンポ,一口当たり咀嚼回数,摂取時間)および歩行能力とした。咀嚼行動はシャープ社製bitescanを用いて測定し,歩行能力はタイムアップアンドゴーテスト(TUG)により評価した。各項目の関連性を,Spearmanの相関係数(P<0.05)を算出して検討した。
【結果と考察】
TUGと舌圧(rs=-0.33),オーラルディアドコキネシス/ta/(rs=-0.21),/ka/(rs=-0.28)の3項目との間には弱い負の相関が認められ,歩行能力が低いと舌圧や舌の巧緻性が低いことが示唆された。また,TUGと咀嚼テンポ(rs=-0.22)との間に弱い負の相関,摂取時間(rs=0.33)との間には弱い正の相関が認められ,歩行能力が低いと咀嚼スピードが遅く時間がかかることが示唆された。今回の結果より,全身の筋力低下による歩行能力の低下は,舌の筋力低下とも関連していると考えられた。また,歩行スピードの低下は,オーラルディアドコキネシスといった舌の繰り返し運動や咀嚼運動のスピード低下と関連していた。以上の結果より,地域在住高齢者において,咀嚼スピードや舌の巧緻性の低下は,歩行能力の低下と関連していることが示唆された。(COI開示:なし)(新潟大学倫理審査委員会、承認番号:2017-0230)