The 34th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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シンポジウム1
口腔内の老化を基礎から知る

Sat. Jun 17, 2023 8:45 AM - 9:45 AM 第2会場 (3階 G303)

座長:
金澤 学(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 口腔デジタルプロセス学分野)
黒嶋 伸一郎(長崎大学 生命医科学域(歯学系) 口腔インプラント学分野)

企画:学術委員会

[SY1-3] 歯周病の重症化とカンヨウケイ幹細胞の老化を知ろう

○秋山 謙太郎1 (1. 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 インプラント再生補綴学分野)

【略歴】
2001年 岡山大学歯学部 卒
2005年 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 顎口腔機能制御学分野 卒
2006年 University of Southern California 博士研究員
2009年  同  Research Associate
2012年 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 インプラント再生補綴学分野 助教
2014年 岡山大学病院クラウンブリッジ補綴科(現 歯科・口腔インプラント科部門) 講師
【抄録(Abstract)】
カンヨウケイ(間葉系)幹細胞は,我々の体を構成する様々な組織に低頻度で存在する細胞で,体性幹細胞と呼ばれる細胞のひとつです.間葉系幹細胞は,自らを複製する自己複製能だけでなく,ひとつの細胞から骨や筋肉,脂肪など,数種類の細胞になる能力(多分化能)を有しています.間葉系幹細胞は,外傷や疾患によって損傷した組織が修復される際に,様々な細胞に分化することで組織を再生したり,局所の過剰な炎症反応を抑制(免疫調節能)したりする役割を果たすと考えられています.
このような多機能をもつ間葉系幹細胞ですが,我々の体内でその機能を発揮するにあたって,慢性的な炎症を伴う全身性疾患や,機械的刺激のほか,宿主の年齢など,様々な要因によって影響を受ける可能性が示唆されています.さらには,我々の体内にもともと存在する“内在性”の間葉系幹細胞は,宿主の加齢によって,その数が激減することも報告されており,骨髄の脂肪髄化や筋肉量の低下,皮膚などの外見に現れる様々な加齢による退行性変化には,間葉系幹細胞の機能低下が関連しているのではないかと考えられるようになってきました.
我々,歯科の分野における疾患の中で,群を抜いて高い罹患率を誇る歯周病においても,中高年にかけて,加齢とともに歯槽骨破壊が進行し,歯周病が重症化することはよく知られています.歯周病の重症化メカニズムとしては,これまでに,攻撃因子(細菌感染,メカニカルストレス等)が生体の防御機能を上回った際に症状が進行するという,ホスト・パラサイト相互作用モデルによって,よく理解され,感染源の徹底的な除去を基本理念に治療が進められてきました.しかしながら,加齢に伴う歯周病の急激な重症化に,本来は生体の防御機構である免疫反応や,炎症によって破壊された組織の再生に,間葉系幹細胞などのホスト側の因子が,どのように関わっているのか,その詳細はほとんど明らかにされてきませんでした.
本シンポジウムでは,宿主の加齢による歯周病の重症化,特に歯槽骨破壊の進行に,リンパ球やマクロファージなどの免疫細胞がどのように活性化し,さらには,内在性間葉系幹細胞の機能変化がどのように関連するのかについて,実験的マウス歯周病モデルを用いて得られたデータをもとに,これまでバイオロジー研究に関わって来られなかった方々にもできるだけわかりやすく,我々の知見をお伝えできればと考えております.