[SY4-3] 高齢者の歯科受診による急性疾患の入院予防効果:レセプトデータを用いた30万人の傾向スコア分析
【略歴】
1988年 帝京大学医学部卒業
1992年 帝京大学大学院修了(博士(医学))
1996年 ハーバード大学公衆衛生大学院修了(Master of Public Health)
1992年 帝京大学医学部(公衆衛生学講座)・助手
1996年 東京都老人総合研究所(疫学部門)・研究員
2000年 京都大学大学院医学研究科(医療経済学分野)・助教授
2009年 京都大学大学院医学研究科(健康情報学分野)・准教授
2011年 東京都健康長寿医療センター研究所(福祉と生活ケア研究チーム)・研究部長
筑波大学医学医療系・客員教授
帝京大学大学院公衆衛生学研究科・客員教授
京都大学大学院医学研究科・非常勤講師
厚生労働省 高齢者の保健事業のあり方検討ワーキンググループ・構成員(2016年度~)
国民健康保険中央会 高齢者の保健事業ワーキンググループ・委員(2019年度~2022年度)
東京都国民健康保険団体連合会 保健事業支援・評価委員会・委員(2018年度~)
栃木県後期高齢者医療広域連合 高齢者保健事業推進協議会・アドバイザー(2021年度~)
板橋区 地域ケア推進協議会・委員(2016年度~)
新宿区 高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施検討会・委員(2022年度~)
1988年 帝京大学医学部卒業
1992年 帝京大学大学院修了(博士(医学))
1996年 ハーバード大学公衆衛生大学院修了(Master of Public Health)
1992年 帝京大学医学部(公衆衛生学講座)・助手
1996年 東京都老人総合研究所(疫学部門)・研究員
2000年 京都大学大学院医学研究科(医療経済学分野)・助教授
2009年 京都大学大学院医学研究科(健康情報学分野)・准教授
2011年 東京都健康長寿医療センター研究所(福祉と生活ケア研究チーム)・研究部長
筑波大学医学医療系・客員教授
帝京大学大学院公衆衛生学研究科・客員教授
京都大学大学院医学研究科・非常勤講師
厚生労働省 高齢者の保健事業のあり方検討ワーキンググループ・構成員(2016年度~)
国民健康保険中央会 高齢者の保健事業ワーキンググループ・委員(2019年度~2022年度)
東京都国民健康保険団体連合会 保健事業支援・評価委員会・委員(2018年度~)
栃木県後期高齢者医療広域連合 高齢者保健事業推進協議会・アドバイザー(2021年度~)
板橋区 地域ケア推進協議会・委員(2016年度~)
新宿区 高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施検討会・委員(2022年度~)
【抄録(Abstract)】
【目的】
75歳以上の高齢者(後期高齢者)を対象に、レセプト情報を用いて肺炎や尿路感染症、脳卒中発作、急性冠症候群による入院を把握し、歯科医療機関の受診(歯科受診)がこれら全身疾患による入院の予防効果があるかどうか、傾向スコアマッチング法を用いて検討した。
【方法】
北海道の75歳以上の者でベースライン期間(2016年9月~2017年2月)にレセプトが発生した748,113人のうち、除外基準該当者(ベースライン期間に入院経験者、在宅医療利用者、歯髄炎、要介護認定者、死亡者、共変量情報の欠損者)以外を分析対象者とした。曝露変数はベースライン期間における歯科受診の有無、アウトカムは追跡期間(2017年3月~2019年3月)中の肺炎、尿路感染症、脳卒中発作、急性冠症候群による入院とした。対象疾患の入院は、追跡期間中に入院レセプトに対象疾患が登録され、疾患登録同月に各疾患の急性期の治療行為が登録された場合と定義した。共変量は性別、年齢、医療費自己負担割合、市区町村、各種併存疾患、健診受診とし、これらの情報から対象者の歯科受診確率を計算し、傾向スコアとして使用した。歯科受診あり群となし群から傾向スコアが近接しているペアを抽出してマッチングを行い、歯科受診あり群となし群の特性の同等性は標準化差を用いて評価した。マッチング後、両群の疾患別の入院発生率の差、歯科受診なし群を基準とした受診あり群における入院発生のリスク比を算出した。
【結果】
分析対象者は432,292人で、うち歯科受診あり群は149,639名(34.6%)であった。傾向スコアマッチングの結果、歯科受診あり群と歯科受診なし群から148,032組(合計296,064名)が抽出された。追跡期間中、歯科受診無し群に比べて歯科受診あり群では、肺炎、脳卒中発作、尿路感染症による入院発生率が有意に低かった(歯科受診あり群 vs 受診なし群~肺炎:4.9% vs 5.8%、脳卒中発作:2.1% vs 2.2%、尿路感染症:2.2% vs 2.5%)。歯科受診あり群の入院発生のリスク比は、肺炎0.85(P<0.001)、脳卒中発作0.95(P=0.029)、尿路感染症0.87(P<0.001)と、歯科受診による有意な抑制効果が認められたが、急性冠症候群では有意ではなかった(0.99、P=0.613)。
【考察】
後期高齢者の歯科受診効果を示した今回の結果は、後期高齢者における歯科保健・歯科医療のあり方を検討する上で重要な知見である。今後は、本研究で除外した要介護高齢者においても同様に効果が得られるのか、更には、どのような歯科診療行為が急性期疾患の発症抑制と関係するか検討する。
出典:Mitsutake S, Ishizaki T, Edahiro A, et al. Arch Gerontol Geriatr. 2023; 107: 104876.
本研究は、厚生労働科学研究費補助金(20FA1015)(研究代表者:石崎達郎)の助成を受けて実施された。
【目的】
75歳以上の高齢者(後期高齢者)を対象に、レセプト情報を用いて肺炎や尿路感染症、脳卒中発作、急性冠症候群による入院を把握し、歯科医療機関の受診(歯科受診)がこれら全身疾患による入院の予防効果があるかどうか、傾向スコアマッチング法を用いて検討した。
【方法】
北海道の75歳以上の者でベースライン期間(2016年9月~2017年2月)にレセプトが発生した748,113人のうち、除外基準該当者(ベースライン期間に入院経験者、在宅医療利用者、歯髄炎、要介護認定者、死亡者、共変量情報の欠損者)以外を分析対象者とした。曝露変数はベースライン期間における歯科受診の有無、アウトカムは追跡期間(2017年3月~2019年3月)中の肺炎、尿路感染症、脳卒中発作、急性冠症候群による入院とした。対象疾患の入院は、追跡期間中に入院レセプトに対象疾患が登録され、疾患登録同月に各疾患の急性期の治療行為が登録された場合と定義した。共変量は性別、年齢、医療費自己負担割合、市区町村、各種併存疾患、健診受診とし、これらの情報から対象者の歯科受診確率を計算し、傾向スコアとして使用した。歯科受診あり群となし群から傾向スコアが近接しているペアを抽出してマッチングを行い、歯科受診あり群となし群の特性の同等性は標準化差を用いて評価した。マッチング後、両群の疾患別の入院発生率の差、歯科受診なし群を基準とした受診あり群における入院発生のリスク比を算出した。
【結果】
分析対象者は432,292人で、うち歯科受診あり群は149,639名(34.6%)であった。傾向スコアマッチングの結果、歯科受診あり群と歯科受診なし群から148,032組(合計296,064名)が抽出された。追跡期間中、歯科受診無し群に比べて歯科受診あり群では、肺炎、脳卒中発作、尿路感染症による入院発生率が有意に低かった(歯科受診あり群 vs 受診なし群~肺炎:4.9% vs 5.8%、脳卒中発作:2.1% vs 2.2%、尿路感染症:2.2% vs 2.5%)。歯科受診あり群の入院発生のリスク比は、肺炎0.85(P<0.001)、脳卒中発作0.95(P=0.029)、尿路感染症0.87(P<0.001)と、歯科受診による有意な抑制効果が認められたが、急性冠症候群では有意ではなかった(0.99、P=0.613)。
【考察】
後期高齢者の歯科受診効果を示した今回の結果は、後期高齢者における歯科保健・歯科医療のあり方を検討する上で重要な知見である。今後は、本研究で除外した要介護高齢者においても同様に効果が得られるのか、更には、どのような歯科診療行為が急性期疾患の発症抑制と関係するか検討する。
出典:Mitsutake S, Ishizaki T, Edahiro A, et al. Arch Gerontol Geriatr. 2023; 107: 104876.
本研究は、厚生労働科学研究費補助金(20FA1015)(研究代表者:石崎達郎)の助成を受けて実施された。