[認定P-06] 下顎歯肉癌による下顎骨区域切除後の右側下顎欠損と多数歯欠損に起因する咀嚼・審美障害
【緒言・目的】
口腔悪性腫瘍術後の顎欠損や口腔前庭の喪失は機能障害を惹起し,口腔関連QOLを低下させる。今回,高齢者における口腔悪性腫瘍術後の部分的な顎欠損に対して広範囲顎骨支持型装置を応用し,咀嚼・審美障害を改善した1例を経験したので報告する。
【症例および経過】
69歳男性で特記事項はない。右側下顎頬側歯肉に悪性腫瘍を疑う潰瘍を認め,2020年1月に紹介受診された。検査の結果,右側下顎歯肉癌(T4aN1M0, StagⅣ)と診断され,2020年2月に右側下顎悪性腫瘍切除術,下顎骨区域切除術,右根治的頸部郭清術,ならびに遊離腓骨再建術が行われ,12月に咀嚼・審美障害を主訴として当科を受診した。術後約1年の経過観察期間を経て,義歯の維持安定性向上による咀嚼機能の回復と残存歯保護を目的とし,広範囲顎骨支持型補綴治療を行うこととした。2021年9月,右側下顎臼歯部に4本のインプラントを埋入し,2022年4月,埋入位置の問題と清掃性の観点から二次手術は1本のインプラントに,また,顎堤形成術と遊離歯肉移植術を同時に行った。二次手術を終えた1本のインプラントには清掃性と支持性を考慮して根面板形態のカスタムアバットメントを装着し,部分床義歯タイプの広範囲顎骨支持型装置を装着した。下顎歯肉癌切除術終了約4年が経過し,腫瘍の再発と転移はない。広範囲顎骨支持型装置装着から約半年が経過したがインプラント周囲粘膜の状態は良好で,OHIP-Jによる患者満足度は80点から30点へ,咀嚼能力検査も80mg/dLから165mg/dLに改善し,摂取可能食品質問表(平井敏博ら,日本補綴歯科学会誌,1988)では,第4群と第5群の食品接種が可能となっていた。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例では,最終的に1本のインプラントを利用して根面板形態のカスタムアバットメントを装着できたことが義歯の維持安定性向上に寄与し,咀嚼・審美障害の改善と口腔関連QOLの向上に繋がった。広範囲顎骨支持型装置は,定期的なメインテナンスによるインプラントの管理が重要となってくるものの,従来の顎義歯と比較して,義歯の機能性と審美性向上の観点において有効な治療法であると考えられた。
(COI開示:なし 倫理審査対象外)
口腔悪性腫瘍術後の顎欠損や口腔前庭の喪失は機能障害を惹起し,口腔関連QOLを低下させる。今回,高齢者における口腔悪性腫瘍術後の部分的な顎欠損に対して広範囲顎骨支持型装置を応用し,咀嚼・審美障害を改善した1例を経験したので報告する。
【症例および経過】
69歳男性で特記事項はない。右側下顎頬側歯肉に悪性腫瘍を疑う潰瘍を認め,2020年1月に紹介受診された。検査の結果,右側下顎歯肉癌(T4aN1M0, StagⅣ)と診断され,2020年2月に右側下顎悪性腫瘍切除術,下顎骨区域切除術,右根治的頸部郭清術,ならびに遊離腓骨再建術が行われ,12月に咀嚼・審美障害を主訴として当科を受診した。術後約1年の経過観察期間を経て,義歯の維持安定性向上による咀嚼機能の回復と残存歯保護を目的とし,広範囲顎骨支持型補綴治療を行うこととした。2021年9月,右側下顎臼歯部に4本のインプラントを埋入し,2022年4月,埋入位置の問題と清掃性の観点から二次手術は1本のインプラントに,また,顎堤形成術と遊離歯肉移植術を同時に行った。二次手術を終えた1本のインプラントには清掃性と支持性を考慮して根面板形態のカスタムアバットメントを装着し,部分床義歯タイプの広範囲顎骨支持型装置を装着した。下顎歯肉癌切除術終了約4年が経過し,腫瘍の再発と転移はない。広範囲顎骨支持型装置装着から約半年が経過したがインプラント周囲粘膜の状態は良好で,OHIP-Jによる患者満足度は80点から30点へ,咀嚼能力検査も80mg/dLから165mg/dLに改善し,摂取可能食品質問表(平井敏博ら,日本補綴歯科学会誌,1988)では,第4群と第5群の食品接種が可能となっていた。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例では,最終的に1本のインプラントを利用して根面板形態のカスタムアバットメントを装着できたことが義歯の維持安定性向上に寄与し,咀嚼・審美障害の改善と口腔関連QOLの向上に繋がった。広範囲顎骨支持型装置は,定期的なメインテナンスによるインプラントの管理が重要となってくるものの,従来の顎義歯と比較して,義歯の機能性と審美性向上の観点において有効な治療法であると考えられた。
(COI開示:なし 倫理審査対象外)