[認定P-08] パーキンソン病患者の固定性インプラント補綴を可撤性へ置換後に介護現場でトラブルを生じた症例
【緒言・目的】 終末期の高齢者において,口腔内に残存した固定性の上部構造が粘膜損傷の原因となることが懸念されている。そこで,要介護になる前に固定性インプラント補綴(FIP)からインプラントオーバーデンチャー(IOD)へ置換する方法が提案されているが,置換後の経過に関する報告は少ない。今回,パーキンソン病(PD)を有する高齢者のFIPをIODへ置換後にインプラントに起因するトラブルを生じた症例を経験したので報告する。
【症例および経過】 81歳,男性。PDと認知症の既往あり。2016年10月,歯の破折を主訴に来院した。今後,残存歯が破折した際の補綴的対応や介護者による口腔衛生管理が容易になることを期待し,下顎両側臼歯部FIPのIODへの置換を計画した。2017年9月にアタッチメント(LOCATOR®️)を併用したIODを作製したところ,患者は問題なくIODを使用できた。2018年に要介護1,2019年に要介護3に認定され,運動機能低下により通院が困難となってきたため,2020年から自宅での訪問診療へ移行し,専門的口腔衛生管理と歯冠破折が生じた際のIODの増歯修理を行った。訪問診療移行時,障害高齢者の日常生活自立度はA2,認知症高齢者の日常生活自立度はⅡb,PDのYahrステージはⅢ-2であった。無歯顎となった後もIODを装着して問題なく経口摂取を行っていた。同年5月,患者は胆嚢炎により入院したため,訪問診療は中止となった。同年9月に訪問診療を再開した際,患者は寝たきりになっており,IODは装着不可能で,胃ろうが造設されていた。頬粘膜にアバットメントの擦過による潰瘍を生じていたため,カバースクリューへの置換などを実施したが,粘膜下にスリープさせることはできず,潰瘍は消失しなかった。なお,本報告の発表について患者本人と家族から文書による同意を得ている。
【考察】 FIPをIODへ置換したことで,残存歯に破折が生じた際の増歯修理が容易となり,訪問診療移行後の機能歯数の維持に繋がったと考えられた。しかし,IOD装着不可能となったことにより,頬粘膜の潰瘍が生じた。高径を低くするための対策を講じたが,完全な粘膜下へのスリープはできず,潰瘍は消失しなかった。終末期においては,アバットメントやカバースクリューでさえも粘膜損傷の原因となり得ることが示された。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)
【症例および経過】 81歳,男性。PDと認知症の既往あり。2016年10月,歯の破折を主訴に来院した。今後,残存歯が破折した際の補綴的対応や介護者による口腔衛生管理が容易になることを期待し,下顎両側臼歯部FIPのIODへの置換を計画した。2017年9月にアタッチメント(LOCATOR®️)を併用したIODを作製したところ,患者は問題なくIODを使用できた。2018年に要介護1,2019年に要介護3に認定され,運動機能低下により通院が困難となってきたため,2020年から自宅での訪問診療へ移行し,専門的口腔衛生管理と歯冠破折が生じた際のIODの増歯修理を行った。訪問診療移行時,障害高齢者の日常生活自立度はA2,認知症高齢者の日常生活自立度はⅡb,PDのYahrステージはⅢ-2であった。無歯顎となった後もIODを装着して問題なく経口摂取を行っていた。同年5月,患者は胆嚢炎により入院したため,訪問診療は中止となった。同年9月に訪問診療を再開した際,患者は寝たきりになっており,IODは装着不可能で,胃ろうが造設されていた。頬粘膜にアバットメントの擦過による潰瘍を生じていたため,カバースクリューへの置換などを実施したが,粘膜下にスリープさせることはできず,潰瘍は消失しなかった。なお,本報告の発表について患者本人と家族から文書による同意を得ている。
【考察】 FIPをIODへ置換したことで,残存歯に破折が生じた際の増歯修理が容易となり,訪問診療移行後の機能歯数の維持に繋がったと考えられた。しかし,IOD装着不可能となったことにより,頬粘膜の潰瘍が生じた。高径を低くするための対策を講じたが,完全な粘膜下へのスリープはできず,潰瘍は消失しなかった。終末期においては,アバットメントやカバースクリューでさえも粘膜損傷の原因となり得ることが示された。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)