一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

2024年6月28日(金) 14:40 〜 16:10 ポスター会場 (大ホールC)

[認定P-10] 介護老人福祉施設において保存不可能な残存歯を抜去後,新義歯作成により咀嚼機能の改善が得られた症例

○加藤 久尚1,2、山崎 裕2 (1. 加藤歯科、2. 北海道大学大学院歯学研究院高齢者歯科学教室)

【緒言・目的】
 食事は,高齢者に限らず我々も共通する人生の楽しみの一つである。全身や口腔疾患に起因する様々な問題により,美味しい食事を存分に楽しめないことも多い要介護高齢者に対して,基礎疾患等を考慮した訪問診療を行った1例を報告する。
【症例および経過】
 92歳女性。「義歯が外れやすく咀嚼困難で噛めない」との主訴で,介護老人福祉施設から訪問診療依頼があり訪問した。
既往歴:高血圧症,骨粗鬆症,狭心症。
現病歴:高血圧症は服薬により110/70mmHg前後でコントロールされ,狭心症の発症時期は不明だが,最近1年間発作は起きていない。骨粗鬆症症に対し,2019年10月~2021年6月までリゼドロン酸Na75mgが投与されていたが,現在は休薬中である。
現病歴:#33,43の根面板が脱離(いつ外れたかは不明)し,義歯が外れやすい。
現症:口腔内所見では#33,43残根(保存不可能),下顎残根上義歯,上下顎総義歯装着。2021.10.18初診時#33,43歯肉に発赤・腫脹が認められた。上下顎義歯の床下粘膜面処置を行なった。 10.29#33,43を生体モニター下で抜歯し,バイタルは安定していた。経過は良好で,上下顎義歯の修理を経て,12.17抜歯後49日目で歯肉の圧痛が認められなくなったため,旧義歯の咀嚼能率をグルコセンサーで計測したところ, 85mg/dlであった。上下顎総義歯を通法に従い製作開始し,1.31上下顎義歯を装着した。数回調整後2.14新義歯の咀嚼能率検査結果が152mg/dlとなり,旧義歯と比較して大幅な改善が認められた。さらに施設職員より食事時間が義歯不適合となる前と同等に回復したと報告があった。 
なお,本報告の発表について患者家族から文書による同意を得ている。
【考察】
 本症例は義歯を新たに作製することで咀嚼機能が改善され,再び常食を食べられるようになった一例である。旧義歯に比べ咀嚼能力が格段に向上したことが証明され,患者の咀嚼機能は,摂取可能食品の種類の増加,食事時間の短縮から判定可能であるが,さらにグルコセンサーによる咀嚼能率検査といったデータでの裏付けを得ることにより,義歯新製前後の検査は大変有益であると考えられた。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)