[認定P-20] 百寿者の経口摂取をサポートした一例
【緒言・目的】
専門的口腔健康管理,口腔機能訓練,栄養指導の早期介入により百寿者の経口摂取を8年間に亘り支援した一例を経験したので報告する。
【症例および経過】
初診時年齢97歳。女性。脳梗塞後遺症,発作性心房細動,高血圧,狭心症の既往あり。胸骨圧迫骨折のため車椅子上にて生活。要介護度2。義歯破損を主訴に当院へ歯科訪問診療依頼があったため,患者宅を訪問した。初診日に義歯修理は終了し,口腔衛生状態が不良だったので,専門的口腔健康管理を月に一回の頻度で開始した。初診から5年後「食事中のむせが増えてきた。おにぎりを詰まらせた。」と訴えがあったため,嚥下スクリーニング検査を施行したところ,RSST:1回/30sec,MWST(シリンジ3ml:プロフィール4,シリンジ5ml:プロフィール4,シリンジ10ml:プロフィール3)であり,軽度の摂食嚥下機能障害を認めた。口腔機能訓練(発声訓練,ハーモニカ,ブローイング,ROM訓練)を開始。誤嚥性肺炎予防の観点から専門的口腔健康管理を週に1度へと変更し,管理栄養士による食事指導も開始した。食事形態は常食,常菜を継続可能と判断した。初診時から7年後,傾眠強くベッド上での生活が中心となる。水分摂取量低下,要介護度2から4へ変更になった。覚醒状態が良好なときに食べられる量を無理せず摂取するよう指導。粒状のものは口から出してしまうので,嚥下調整食学会分類2021コード分類2-1相当の食事形態に変更するよう指導した。週に一度の専門的口腔健康管理,口腔機能訓練,月に一度の管理栄養士による食事指導は継続し,初診時より8年後の105歳5か月で逝去された。最後まで経口摂取を維持できた。なお,症例報告については患者家族に説明し,文書による同意を得ている。
【考察】
本症例より,摂食嚥下機能が比較的保たれている早期の段階から歯科介入を行うことが,患者の経口摂取維持に寄与できることが示唆された。本症例の有利な点として,患者家族の協力度が非常に高く,家庭での口腔衛生管理や嚥下調整食の調理にも積極的に参加して頂けたことが挙げられる。本症例を通し,切れ目のない歯科医療を提供することが如何に患者のQOL維持,向上に寄与するかを学んだ。今後も地域包括ケアシステムの一員として目の前の患者に最後まで寄り添う覚悟で診療に臨みたい。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)
専門的口腔健康管理,口腔機能訓練,栄養指導の早期介入により百寿者の経口摂取を8年間に亘り支援した一例を経験したので報告する。
【症例および経過】
初診時年齢97歳。女性。脳梗塞後遺症,発作性心房細動,高血圧,狭心症の既往あり。胸骨圧迫骨折のため車椅子上にて生活。要介護度2。義歯破損を主訴に当院へ歯科訪問診療依頼があったため,患者宅を訪問した。初診日に義歯修理は終了し,口腔衛生状態が不良だったので,専門的口腔健康管理を月に一回の頻度で開始した。初診から5年後「食事中のむせが増えてきた。おにぎりを詰まらせた。」と訴えがあったため,嚥下スクリーニング検査を施行したところ,RSST:1回/30sec,MWST(シリンジ3ml:プロフィール4,シリンジ5ml:プロフィール4,シリンジ10ml:プロフィール3)であり,軽度の摂食嚥下機能障害を認めた。口腔機能訓練(発声訓練,ハーモニカ,ブローイング,ROM訓練)を開始。誤嚥性肺炎予防の観点から専門的口腔健康管理を週に1度へと変更し,管理栄養士による食事指導も開始した。食事形態は常食,常菜を継続可能と判断した。初診時から7年後,傾眠強くベッド上での生活が中心となる。水分摂取量低下,要介護度2から4へ変更になった。覚醒状態が良好なときに食べられる量を無理せず摂取するよう指導。粒状のものは口から出してしまうので,嚥下調整食学会分類2021コード分類2-1相当の食事形態に変更するよう指導した。週に一度の専門的口腔健康管理,口腔機能訓練,月に一度の管理栄養士による食事指導は継続し,初診時より8年後の105歳5か月で逝去された。最後まで経口摂取を維持できた。なお,症例報告については患者家族に説明し,文書による同意を得ている。
【考察】
本症例より,摂食嚥下機能が比較的保たれている早期の段階から歯科介入を行うことが,患者の経口摂取維持に寄与できることが示唆された。本症例の有利な点として,患者家族の協力度が非常に高く,家庭での口腔衛生管理や嚥下調整食の調理にも積極的に参加して頂けたことが挙げられる。本症例を通し,切れ目のない歯科医療を提供することが如何に患者のQOL維持,向上に寄与するかを学んだ。今後も地域包括ケアシステムの一員として目の前の患者に最後まで寄り添う覚悟で診療に臨みたい。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)