一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

2024年6月28日(金) 14:40 〜 16:10 ポスター会場 (大ホールC)

[認定P-24] COVID-19治療中の安静・禁食によって廃用とともに摂食嚥下障害が悪化した症例

○齊藤 美都子1、中川 量晴1 (1. 東京医科歯科大学摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【緒言・目的】パーキンソン病が既往にある患者がCOVID-19で入院し、廃用が進み経口摂取禁止となったが、口腔機能や摂食機能に専門的にアプローチし食支援を行った一例である。

【症例および経過】
85歳、女性、既往歴はパーキンソン病。栄養は主に胃瘻から取っており、経口からはペースト食やゼリーをお楽しみで摂取していた。その後COVID-19で入院中、細菌性肺炎を併発し経口摂取禁止となった。入院前のfunctional oral intake scale(FOIS)は2であったが、退院時は経口摂取しておらず、FOISは1に下がった。入院期間は21日間で肺炎治療が主であり、身体機能や嚥下のリハビリテーションは実施されなかった。退院後、家族の「口から食べさせたい」を主訴とし、嚥下機能評価のため訪問診療依頼があった。初診時は意識清明、要介護度5、ADL全介助、TP 7.0 g/dL、Alb 3.5 g/dLであった。口腔内所見は臼歯部咬合は無く、義歯未使用、開口状態が続くため口腔内は乾燥しており、乾燥した痰が口蓋や舌背に付着していた。まずは口腔内の乾燥や痰への対応を行い、その後咽頭への送り込み不良があるため、姿勢はリクライニング60度とし、学会分類2021コード0j相当のゼリーを用いた嚥下内視鏡検査(VE)を行った。嚥下反射惹起遅延はありゼリーの喉頭侵入があるものの誤嚥は認められず、咽頭残留もなかった。そこで、口腔清掃後、覚醒の良い時に姿勢調節を行い、ゼリーでの直接訓練を家族に指導した。送り込みがみられない場合は、舌や顎下を刺激するよう指導した。その後、喉頭侵入がなくなり、入院前のようにトロミを付与したペースト食などをお楽しみ程度に経口摂取が可能となった。また訪問診療開始後、誤嚥性肺炎は再発していない。

【考察】
退院後、早期に直接訓練を開始したことが、その後の摂食嚥下機能の向上に繋がった。また口腔内の乾燥の対処法や清掃方法、経口摂取できる口腔環境を整えることも重要であった。口から何か食べ続けさせたいという家族の強い思いもあるが、誤嚥のリスクから経口摂取を再開できないことは多い。今回はVEによる評価で安全に経口摂取できる食形態を家族に提案したことも、家族の精神的な支援に繋がったと考察された。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)