[認定P-27] 誤嚥性肺炎後に長期の禁食となった頸椎損傷患者に対し経口摂取支援を行った症例
【緒言・目的】
全身疾患やADLの低下は嚥下機能にも影響する。また長期の禁食状態は,口腔咽頭領域に廃用性変化を生じ機能を低下させる。誤嚥性肺炎発症後に禁食および胃瘻管理となった頸椎損傷後の摂食嚥下障害患者に対し摂食嚥下リハビリテーション(嚥下リハ)を行い,適切な評価により経口摂取が可能となった一例を報告する。
【症例および経過】
78歳男性。76歳で頸椎損傷,四肢麻痺によりADLが低下し,3食ミキサー食を経口摂取していたが,新型コロナウイルス(COVID19)罹患後に誤嚥性肺炎を発症し禁食,胃瘻造設となった。7か月後,お楽しみでの経口摂取希望を主訴に歯科訪問診療を開始した。初診時所見はJCS0,臨床的認知尺度(CDR)0,ADL全介助,BMI16.1,Alb3.5g/dLであった。嚥下内視鏡検査(VE)では嚥下反射惹起遅延が認められ,濃いとろみ(学会分類2021)で,喉頭侵入を認めたが誤嚥は認めなかった。直接嚥下訓練開始可能と判断し,施設看護師にとろみ水での直接嚥下訓練を指導した。間接嚥下訓練として舌骨上筋の筋力向上を目的とした開口訓練および喀出力向上を目的とした呼吸リハを指導した。訪問開始2か月後,VEでの再評価にて,濃いとろみで喉頭侵入を認めず,十分量摂取可能となったことから食事開始可能と判断した。経管栄養と併用し昼食のみミキサー食半量提供を開始した。定期的に嚥下機能評価を行い,施設スタッフとともに食事量および食事形態を適宜検討した。誤嚥性肺炎発症から1年後,訪問開始7ヶ月後,とろみ付き極刻み食,全粥を全量摂取可能となった。朝夕は施設のスタッフが少なく食事介助が難しいため,昼食のみの提供を今後も継続することとした。DSS4,FOIS3,FILS5,BMI17.3,Alb3.9g/dLとなり,誤嚥性肺炎を発症することなく経過は良好である。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
頸椎損傷後の四肢麻痺は,座位保持能力や喀出力などの嚥下に関わる予備能力を低下させ,さらにCOVID19発症による抵抗力の低下が誤嚥性肺炎の発症に起因したと推測された。加齢,長期禁食による廃用,疾患による影響など複数の嚥下障害の要因を考慮した上で,施設スタッフと連携し嚥下リハを実施したことが,経口摂取に繋がった考えられた。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)
全身疾患やADLの低下は嚥下機能にも影響する。また長期の禁食状態は,口腔咽頭領域に廃用性変化を生じ機能を低下させる。誤嚥性肺炎発症後に禁食および胃瘻管理となった頸椎損傷後の摂食嚥下障害患者に対し摂食嚥下リハビリテーション(嚥下リハ)を行い,適切な評価により経口摂取が可能となった一例を報告する。
【症例および経過】
78歳男性。76歳で頸椎損傷,四肢麻痺によりADLが低下し,3食ミキサー食を経口摂取していたが,新型コロナウイルス(COVID19)罹患後に誤嚥性肺炎を発症し禁食,胃瘻造設となった。7か月後,お楽しみでの経口摂取希望を主訴に歯科訪問診療を開始した。初診時所見はJCS0,臨床的認知尺度(CDR)0,ADL全介助,BMI16.1,Alb3.5g/dLであった。嚥下内視鏡検査(VE)では嚥下反射惹起遅延が認められ,濃いとろみ(学会分類2021)で,喉頭侵入を認めたが誤嚥は認めなかった。直接嚥下訓練開始可能と判断し,施設看護師にとろみ水での直接嚥下訓練を指導した。間接嚥下訓練として舌骨上筋の筋力向上を目的とした開口訓練および喀出力向上を目的とした呼吸リハを指導した。訪問開始2か月後,VEでの再評価にて,濃いとろみで喉頭侵入を認めず,十分量摂取可能となったことから食事開始可能と判断した。経管栄養と併用し昼食のみミキサー食半量提供を開始した。定期的に嚥下機能評価を行い,施設スタッフとともに食事量および食事形態を適宜検討した。誤嚥性肺炎発症から1年後,訪問開始7ヶ月後,とろみ付き極刻み食,全粥を全量摂取可能となった。朝夕は施設のスタッフが少なく食事介助が難しいため,昼食のみの提供を今後も継続することとした。DSS4,FOIS3,FILS5,BMI17.3,Alb3.9g/dLとなり,誤嚥性肺炎を発症することなく経過は良好である。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
頸椎損傷後の四肢麻痺は,座位保持能力や喀出力などの嚥下に関わる予備能力を低下させ,さらにCOVID19発症による抵抗力の低下が誤嚥性肺炎の発症に起因したと推測された。加齢,長期禁食による廃用,疾患による影響など複数の嚥下障害の要因を考慮した上で,施設スタッフと連携し嚥下リハを実施したことが,経口摂取に繋がった考えられた。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)