[認定P-30] 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーによる嚥下障害に対し訪問診療での多職種連携により口腔機能を維持した症例
【緒言・目的】
筋ジストロフィーの摂食嚥下リハビリテーションでは,過用性筋力低下を引き起こしやすいため,介入の際は配慮が必要である。今回,顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの発症をきっかけに嚥下障害を呈した高齢者に対し,訪問診療での多職種連携による定期的な訓練介入により,経口摂取量の向上や口腔機能を維持した1例を経験したので報告する。
【症例および経過】
79歳,男性。既往歴は筋ジストロフィーの疑い,徐脈頻脈症候群,ペースメーカー留置後,頸動脈狭窄症,腎機能障害,高血圧症,高尿酸血症であった。X年9月に嚥下機能検査と嚥下リハビリを希望し当科初診した。初診時のBMIは18.3であった。栄養摂取状況は,胃瘻と食形態はコード1j相当を少量経口摂取していた。嚥下機能評価により,舌圧は22.3kPaと低値で,MWSTは4点であった。X年11月に顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーと確定診断がつき,嚥下内視鏡検査と嚥下造影検査を施行した際,喉頭挙上不全と咽頭収縮不全が観察され,顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーによる嚥下機能障害と診断した。筋ジストロフィーの中では予後良好なタイプであったが,高齢であることから嚥下機能の維持を目標とした。家族は,治療への協力に積極的であったことから,自宅での間接訓練と直接訓練を可能な範囲内で試行してもらった。さらに,訪問診療にて言語聴覚士と理学療法士の介入が始まるとの報告を受け,指導内容の診療情報を提供し,連携を図った。初診から14か月後経過した現在も誤嚥性肺炎は認めず,舌圧は23.6kPaと軽度増大し,経口摂取量が増加したことで体重も 2㎏増加し維持している。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例では,原疾患の特性と年齢から嚥下機能の向上は厳しいと思われ機能維持を目標としたが,家族の協力が得られたこと,多職種との連携により定期的な訓練介入が行われ,患者の訓練意欲も継続したことなどにより,経口摂取量の向上や,口腔機能の維持につながった。顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーは,筋ジストロフィーの中では予後が良好とされ,95%の症例が20歳までに発症するとされている。本症例では,80歳で診断がついた極めてまれな症例であることから,その分進行も緩徐であったことが幸いしたと思われた。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)
筋ジストロフィーの摂食嚥下リハビリテーションでは,過用性筋力低下を引き起こしやすいため,介入の際は配慮が必要である。今回,顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの発症をきっかけに嚥下障害を呈した高齢者に対し,訪問診療での多職種連携による定期的な訓練介入により,経口摂取量の向上や口腔機能を維持した1例を経験したので報告する。
【症例および経過】
79歳,男性。既往歴は筋ジストロフィーの疑い,徐脈頻脈症候群,ペースメーカー留置後,頸動脈狭窄症,腎機能障害,高血圧症,高尿酸血症であった。X年9月に嚥下機能検査と嚥下リハビリを希望し当科初診した。初診時のBMIは18.3であった。栄養摂取状況は,胃瘻と食形態はコード1j相当を少量経口摂取していた。嚥下機能評価により,舌圧は22.3kPaと低値で,MWSTは4点であった。X年11月に顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーと確定診断がつき,嚥下内視鏡検査と嚥下造影検査を施行した際,喉頭挙上不全と咽頭収縮不全が観察され,顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーによる嚥下機能障害と診断した。筋ジストロフィーの中では予後良好なタイプであったが,高齢であることから嚥下機能の維持を目標とした。家族は,治療への協力に積極的であったことから,自宅での間接訓練と直接訓練を可能な範囲内で試行してもらった。さらに,訪問診療にて言語聴覚士と理学療法士の介入が始まるとの報告を受け,指導内容の診療情報を提供し,連携を図った。初診から14か月後経過した現在も誤嚥性肺炎は認めず,舌圧は23.6kPaと軽度増大し,経口摂取量が増加したことで体重も 2㎏増加し維持している。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例では,原疾患の特性と年齢から嚥下機能の向上は厳しいと思われ機能維持を目標としたが,家族の協力が得られたこと,多職種との連携により定期的な訓練介入が行われ,患者の訓練意欲も継続したことなどにより,経口摂取量の向上や,口腔機能の維持につながった。顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーは,筋ジストロフィーの中では予後が良好とされ,95%の症例が20歳までに発症するとされている。本症例では,80歳で診断がついた極めてまれな症例であることから,その分進行も緩徐であったことが幸いしたと思われた。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)