一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

2024年6月28日(金) 14:40 〜 16:10 ポスター会場 (大ホールC)

[認定P-32] 舌がんおよび下顎骨骨髄炎による摂食嚥下障害の1例

○進藤 彩花1、大岡 貴史1 (1. 明海大学歯学部機能保存回復学講座摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【緒言・目的】
 舌がん術後,下顎骨骨髄炎による下顎再建手術を行った患者に対し摂食指導を行い改善がみられた1例を経験したので報告する。
【症例および経過】
 65歳,男性。10年前に舌がんの既往があり,化学療法で治療。5年前に左舌縁部に再発し,左側縁の部分切除(舌根,舌尖部は保存)。機能低下は見られたが,軟食摂取を問題なく行っていた。1年前に下顎骨骨髄炎になり下顎骨の大部分を切除。再建手術を行った後に,軟食摂取が難しくなったため当院に来院。日常は嚥下調整食3と2-2,2-1の食形態を摂取。水分はとろみなし。近隣の歯科医院にて顎義歯を調整しているが食事時には使用せず。体重63㎏で半年間増減なし。初診時では,舌尖は左右口角に届かず,開口量は30mm。フードテスト3で左側口腔前庭に残留が多い。舌運動障害による食塊形成移送不全を疑いVEを実施。嚥下調整食3は嚥下後に喉頭蓋谷および梨状窩に残留。1jを用いた交互嚥下により残留解消。水分では嚥下反射遅延あり,薄いとろみ水分では喉頭蓋谷に到達した時点で嚥下反射あり。準備期,口腔期,咽頭期の摂食嚥下障害と診断し,食形態の調整と嚥下法指導にて対応を検討した。薄いとろみ水分による交互嚥下および食形態は嚥下調整食2-1を中心にするように指導。薄いとろみ水分による交互嚥下にて1か月後には食事中のむせが減少。下顎骨骨髄炎の治療経過について医科と対診を行い,転移や再発の可能性について情報収集を行った。摂食については食事量の維持を目的とし,舌ROM訓練,舌抵抗訓練を指導。1か月後舌運動機能は若干改善し,食事量および体重は維持されている。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 舌がん術後,下顎骨骨髄炎による下顎再建手術を行った患者の摂食嚥下障害に対する症例であった。主訴が「むせ,食べにくさの自覚」であったが,体重は安定していたため,食事摂取量の維持を目的とし,代償法である食形態,嚥下法と間接訓練を行う治療計画を立案した。一方で,下顎骨の大部分が喪失していること,舌がん再発既往があること,顎義歯が使用できていないことなどから,医科および近隣歯科医師と対診を行いつつ治療方針を修正し,経口による栄養摂取を行うことを目標として今後も多角的な介入が必要であると考えられた。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)