[摂食審査P-02] 脳梗塞を再発し胃瘻造設したが,老人施設入所後全量経口摂取に移行できた症例
【緒言・目的】脳梗塞を再発し胃瘻造設したが,老人施設入所後全量経口摂取に移行した症例を経験したので報告する。【症例および経過】 86 歳男性。2012年にも脳幹梗塞発症し胃瘻造設後経口摂取に移行した経緯があった。2020年1月に多発性ラクナ梗塞(左右基底核,放線冠)にて急性期治療後,同年3月に回復期リハビリテーション病院に転院,誤嚥性肺炎を反復して胃瘻造設し,ST 介入下で少量の経口摂取をしていた。同年9月に介護老人保健施設入所,嚥下評価依頼があった。左不全麻痺,嗄声,高次脳機能障害あり,意思疎通可能,口腔内状態は残根3歯,義歯なし,清掃状態やや不良であった。耳鼻咽喉科で嚥下内視鏡検査,歯科で嚥下造影検査を行ったところ,食塊形成及び水分保持やや不良,唾液やトロミ水分の喉頭侵入あるも排出,咳反射良好で誤嚥を認めなかった。経口摂取開始可能と評価し,短期目標は誤嚥性肺炎予防と経口摂取維持,長期目標は全量経口摂取と食事形態の回復とした。間接訓練と義歯作製が望ましかったが拒否され,口腔清掃と直接訓練のみの介入とし,月に2回のミールラウンドで各職種との意見交換,現状確認を行った。看護師より,胃瘻からの水分注入時にむせるという情報があり,逆流を疑って薄いトロミを付与したところむせがみられなくなった。摂取ペースが早かったため,見守りと小分け対応,食後座位保持の徹底を看護師,介護士に依頼した。嚥下調整食1jを小鉢より開始,約4か月かけて嚥下調整食3の全量経口摂取に移行した。摂取カロリーは管理栄養士の管理を受けた。途中発熱がみられることが2度あったが,施設常勤医師にて対応し,経口摂取中止になることはなかった。家族本人ともに普通食の摂取希望が強かったが,義歯作製しなければこれ以上の形態変更はできないことを看護師,ケアマネジャーから説明し納得された。なお,本報告の発表について患者家族から文書による同意を得た。【考察】本施設では看護師,介護士,管理栄養士,理学療法士,ケアマネジャーと歯科医師,歯科衛生士が参加するミールラウンドを行っている。その場で摂食状況の評価及び情報交換を行うことで,食事形態の変更や栄養状態の管理等適切かつ迅速に対応することができた。医師,家族を含めて方針を一致できたこともスムーズな経口移行の要因であったと考えられた。(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)