一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師更新ポスター

[摂食更新P-05] 口腔悪性腫瘍術後患者に対する舌接触補助床の適応における咬合高径に関する検討

○元開 早絵1 (1. 日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科)

【緒言・目的】
 口腔悪性腫瘍術後患者は外科的根治術に伴う欠損により摂食嚥下機能障害を来す症例が多く,歯科的補綴装置の製作により障害の改善が見込まれる。本報告では,口腔悪性腫瘍術後の摂食嚥下障害患者に対して舌接触補助床(以下,PAP)を付与した3症例について報告する。
【症例及び経過】
 症例1:63歳男性。口底癌の診断により,下顎区域切除,舌亜全摘,両側頸部郭清,腓骨,腹直筋皮弁再建術を施行された。上下顎とも無歯顎であった。症例2:62歳女性。口底癌の診断により,腫瘍切除,舌部分切除,植皮を施行された。重度の歯周病のため術中に多数歯抜歯を施行され上下顎とも無歯顎であった。上記2症例はともに嚥下調整食分類2程度を全量経口摂取していた。症例3:69歳男性。舌癌の診断により,舌亜全摘,両側頸部郭清,腹直筋皮弁再建術を施行された。上顎は無歯顎であった。栄養摂取は全量経口摂取しているが,嚥下調整食分類3程度を丸飲みしている状態であった。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。3症例の内,舌亜全摘の施行された症例1,3では,咬合の付与に伴う嚥下機能への影響を考え,咬合採得にあたり嚥下造影検査(以下,VF)を実施した。咬合の付与に伴う口腔通過時間及び嚥下後の咽頭残留量を評価し,食塊移送時,嚥下時に舌口蓋間に空隙が生じないよう義歯床の口蓋部を肥厚させた。舌部分切除にとどまった症例2では解剖学的指標より咬合高径の決定を行い,義歯完成後にVF評価を実施,食物の停滞がみられた口蓋前方部,および下顎義歯舌側の形態修正を実施した。PAP製作後の評価では,非装着時と比較しFTは全症例で3から4,MTFスコアでは,症例1:M3T3F2からM3T3F3,症例2:M3T3F2からM3T4F4,症例3:M3T3F4からM3T4F4への改善が認められ,PAPを装着することにより口腔内食渣の減少だけでなく,口腔内でわずかに食品を押しつぶし処理することが可能となった。
【考察】
 本報告では,症例により再建後の口腔機能・嚥下機能を評価し,上下顎ともに義歯装着可能か判断,PAP製作を行い,VF下での定量的評価に基づいてPAP部分の形態修正を実施することで,摂食嚥下障害の改善が認められた。今後も経過に伴いVFを実施しPAP部の調整を行っていく必要があると考える。(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)