一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師更新ポスター

[摂食更新P-06] 頭頸部がん化学放射線同時併用療法における経口摂取の継続支援と口腔粘膜炎対策への取り組み

○内田 悠理香1 (1. 岡山大学病院 歯科・予防歯科部門)

【目的】 
 頭頸部がん化学放射線同時併用療法(以下,CCRT)では口腔粘膜炎が必発し,その疼痛に起因する摂食嚥下障害が生じる。当院頭頸部がんセンターではCCRT完遂のため予防的に胃瘻造設し,経口摂取が困難な時期に使用する場合が多い。一方,胃瘻依存による廃用が摂食嚥下障害を遷延・重症化させる問題もある。当院病棟では摂食嚥下栄養カンファレンスを毎週行い,CCRT中の経口摂取を可及的に継続できるよう多職種で検討している。
 しかしながら歯科部門では,経口摂取の支援を目標としたクリニカルパスが運用されていない状況であった。2022年度から申請者が初めて参加し,摂食機能療法専門歯科医師の視点で経口摂取の継続支援と誤嚥性肺炎のリスク低減を重視した口腔粘膜炎の症状緩和・重症化予防を目指し,病棟回診の見直しを開始したので報告する。
【方法】 
 今までの歯科部門における病棟回診は週1回1時間枠であった。各歯科医師の判断(例:口腔粘膜炎の悪化,口腔のセルフケアが困難な時期等)で歯科衛生士の介入時期を決めていた。
 申請者は2022年5月より,CCRT開始前から歯科衛生士による患者教育を強化し,経口摂取の継続支援に向けた口腔粘膜炎対策を含む取り組みを始めた。申請者と歯科衛生士は治療経過を密に共有し,介入頻度や対応方法の検討を重ねた。患者から食事摂取状況を聴取し,病棟看護師や管理栄養士に食事内容の工夫を相談するようにした。申請者は,口腔カンジダ症がCCRT中の口腔粘膜炎を悪化させ摂食嚥下障害のリスク因子となる論文報告やWebセミナーの紹介を歯科衛生士に行い,早期に発見し対応するよう周知した。また誤嚥リスクが高い時期には,リスク低減する対応(バイオフィルム除去時の姿勢調整,口腔咽頭吸引,胃瘻注入後の姿勢調整等)を歯科衛生士に指導した。
【結果と考察】
 申請者の担当患者20例のうち,CCRT終了時に経口摂取を継続していたのは15例(75%)であり,このうち4例で胃瘻を併用し,2例で胃瘻を使用せず栄養確保できた。歯科衛生士は処置中の誤嚥防止を徹底し,カンファレンス等で病棟看護師や言語聴覚士に誤嚥リスクを積極的に周知した。
 現在,歯科部門での口腔内評価時に口腔機能も観察しているが,間接訓練に繋げられていない。次の段階として,歯科部門でも間接訓練を行える体制構築を準備中である。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)