一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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歯科衛生士部門

2024年6月29日(土) 13:10 〜 14:10 ポスター会場 (大ホールC)

[優秀P衛生-01] 患者のみならず主介護者の負担軽減を考慮して食支援を行うことで在宅療養を継続できている症例

○中島 淳子1、三輪 俊太1,2,3 (1. 医療法人社団恵眞会三輪歯科医院、2. 医療法人かがやき総合在宅医療クリニック、3. 大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座)

【緒言・目的】 老老介護世帯が増加している現在,在宅介護を継続できるよう主介護者の負担を軽減するための支援が必要とされている。今回,経口摂取禁止の患者に対して,患者の主訴の改善はもとより,主介護者の介護負担の軽減を目的として食支援を行った症例を報告する。【症例および経過】 79歳,男性。S状結腸切除術,誤嚥性肺炎の既往あり。X年4月,回復期病院にて口腔衛生管理依頼があり,当院にて介入を開始した。耳鼻科医の判断で禁食,胃瘻造設となり,X年9月に退院し在宅療養を開始した。退院後,患者と主介護者である妻との生活となったが,患者が昼夜問わず「口から食べたい」と大声で訴えるため,妻の介護疲労が問題点として出現した。X年12月,経口摂取の可否の判断のため主治医立ち会いの下,歯科医師により嚥下内視鏡検査を行い,唾液誤嚥を少量認めるものの食物誤嚥は認めなかった。経腸栄養剤の量を調整した上で,お楽しみの経口摂取が可能となった。とろみ付きコーヒー,ゼリーを用いての直接訓練と間接訓練を歯科が週1回,訪問看護が週2回開始した。経口摂取が可能となったことで空腹感の訴えは減少し,妻の介護疲労も軽減した。X+1年3月,通所介護の利用拒否が続き,妻の介護疲労が再出現した。通所介護の利用拒否の理由は,施設では経口摂取ができず楽しくないからとのことであった。そこで,歯科衛生士と訪問看護師が通所施設を訪問し,施設看護師や職員に対して食事姿勢,ペーシング,とろみの付与について指導した。その結果,週2回の施設利用時もとろみ付きコーヒーや味噌汁を経口摂取することができるようになり,通所介護の利用を再開することが可能となった。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。【考察】 本症例では,禁食に起因する患者の空腹感の訴えや通所施設の利用拒否により,主介護者である妻の負担が増加していた。患者の希望する在宅療養を継続させるためには,患者の支援のみならず主介護者の支援も必要である。歯科衛生士,看護師,通所施設職員が連携して,週に5日間の経口摂取が可能となったことで,患者本人の満足度の向上に加えて,妻の介護負担を軽減させることに貢献することができた。(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)