一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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歯科衛生士部門

2024年6月29日(土) 13:10 〜 14:10 ポスター会場 (大ホールC)

[優秀P衛生-04] 口腔がん患者に対する「摂食嚥下機能評価および訓練フローチャート」の活用

○井原 和美1、大島 亜希子1、松原 恵子1、木村 将典2、岩﨑 理浩2、多田 瑛2,3、水谷 早貴2,4、天埜 皓太2、谷口 裕重2 (1. 朝日大学病院 歯科衛生部、2. 朝日大学歯学部 摂食嚥下リハビリテーション学分野、3. 朝日大学歯学部 口腔外科学分野、4. 朝日大学歯学部 障害者歯科学分野)

【緒言・目的】
口腔がん患者では,術後に器質的障害により摂食嚥下機能が低下する。術後の介入時期や訓練目標は臨床的感覚で実施されるため,臨床の経験年数によって評価・訓練にばらつきがみられることが多い。そこで当院では摂食嚥下機能評価および訓練フローチャート(フローチャート)を運用している。口腔がん患者に対し術前から退院まで評価・訓練を均てん化し,定性的・定量的評価によって現状の機能を【見える化】することで結果に基づいた摂食機能療法を行っている。今回はフローチャートを用いた症例を報告する。
【症例および経過】
80歳女性,20XX年6月24日舌腫瘍疑いのため当科紹介来院され,扁平上皮癌(T1N0M0,StageⅠ)と診断された。既往歴は,くも膜下出血,高血圧,関節リウマチ,頸椎固定術。20XX年9月2日右舌部分切除を施行された。フローチャートに従い術前の口腔機能・摂食嚥下機能評価を実施し,その結果を踏まえ術前から歯科衛生士による専門的口腔衛生管理,咳嗽訓練,呼吸訓練を指導し,術後合併症の予防に努めた。術後4日目COVID-19陽性となったため,隔離病棟での管理であったが個人防護服を装着して口腔衛生管理を行った。術後18日目に術後再評価を実施したところ,VFで液体の嚥下前喉頭侵入,軟飯・きざみ食は喉頭蓋谷に少量残留を認めた。口腔機能は舌可動域制限,舌圧・咀嚼機能が低下していた。結果より,舌可動域拡大・抵抗訓練,息こらえ嚥下,プッシング訓練を実施した。入院中・退院後も歯科衛生士が訓練を継続的に行ったことで,口腔機能・嚥下機能ともに術前まで回復し,食事は3食経口摂取となった。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
口腔がん術後患者の摂食嚥下機能の改善過程は,腫瘍の切除部位や再建・気管切開の有無,年齢・性別・基礎疾患など様々な要因が影響する。本症例では,フローチャートを使用することで介入時期を標準化し,定性的・定量的に評価を行うことで現状の機能を【見える化】することにより歯科衛生士間で訓練目標を共有できた。術前から機能を【見える化】することで患者にフィードバックしやすく,コミュニケーションツールとして使用することで行動変容を促し,機能維持や改善へと繋げることができたと考える。
COI開示:なし
朝日大学病院医学倫理審査委員会承認番号2022-11-06