一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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歯科衛生士部門

2024年6月29日(土) 13:10 〜 14:10 ポスター会場 (大ホールC)

[優秀P衛生-05] 地域在住高齢者における咀嚼行動と口腔機能に関連する予備的研究-ウェアラブルデバイスを用いた検討-

○江口 佳奈1、本川 佳子1、岩崎 正則1,2、白部 麻樹1、五味 達之祐1、枝広 あや子1、平野 浩彦1,3 (1. 東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム 、2. 北海道大学大学院歯学研究院 口腔健康科学講座 予防歯科学教室 、3. 東京都健康長寿医療センター 歯科口腔外科)

【目的】
 咀嚼の評価指標の一つとしてどのように咀嚼したかを評価する咀嚼行動がある。先行研究では口腔機能低下の有無と咀嚼行動の関連が明らかになっている一方,全身の健康に関連する口腔機能の維持・回復のためには早期へのアプローチが不可欠であるが,口腔機能低下の早期発見を目的とした検討はない。そこで口腔機能低下症ではない者を対象として,咀嚼行動をデータ計測できるウェアラブルデバイス「バイトスキャン(シャープ社)」(以下BS)を用いて,地域在住高齢者の咀嚼行動と口腔機能の関連について検討した。
【方法】
 2022年度板橋健康長寿縦断研究に参加した654名のうち,脳血管疾患の既往がない等の適格基準に該当した者に本研究へのリクルートを実施した。リクルートに応じて説明会へ参加し,本研究への同意が得られた者を対象者,口腔機能低下症に該当しない者を解析対象とした。BSを用いて,同一の試験食品摂取時の咀嚼行動を収集した。目的変数である口腔機能低下の状態は,口腔機能低下症の診断に用いられる7つの検査項目のうち,低下に該当する項目数が0項目を健常群,1-2項目を低下予備群とした。説明変数をBSから得られる咀嚼行動(咀嚼回数,平均咀嚼速度(回/分),1口の平均咀嚼数,1口の最大咀嚼数),共変量を性,年齢,現在歯数とした。2項ロジスティック回帰分析により,単変量解析及び共変量を全て投入した多変量解析を行った。有意水準は5%とした。
【結果と考察】
 解析対象は38名(男性25名 女性13名,平均年齢74.0±3.0歳),そのうち口腔機能低下の状態は健常群6名(15.8%),低下予備群32名(84.2%)であった。単変量解析の結果,口腔機能低下の状態と有意に関連した咀嚼行動(OR,95%CI)は,咀嚼回数(0.98,0.97-0.99),1口の最大咀嚼数(0.98,0.97-0.9998)であった。多変量解析では,平均咀嚼速度(0.93,0.87-0.99)が有意に関連した。以上より低下予備群では,健常群と比較して平均咀嚼速度が低いことが示された。本研究は群間において人数に偏りがあり,ある一定の層の結果に過ぎない。今後対象者を増加し,口腔機能低下を早期に発見するための指標を検討し得るデータを構築していく。
(COI開示:なし)
(東京都健康長寿医療センター研究倫理委員会承認番号R22-058)